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第66話、紅ちゃんは突然の旅ではなかったのでした。

 祐也ゆうやは、くれないに、


『そう言えば、お前、どうやってここに来たんだ?観光か?』

『ううん。これ』


ハンドバッグに入れていた書類に、


『た、短期留学?』

『うちの学校。留学制度があるんよ。で、一応、オーストラリアとアメリカとイングランドと、ニュージーランドがあって、オーストラリアは却下‼アメリカ暑苦しいし、ニュージーランドは人口より羊‼それに、指輪物語も他の有名な映画もあそこでとっとるやん。皆がそこいきたがって、それに、イングランドも多かったんやけど、父さんが、珍しくセンセに頼んでこっちにな‼』

『って、そういう場合、先生とか、ホームステイ先の人とか……』

『喧嘩した‼』

『はぁぁ‼』


祐也は叫ぶとずきずき痛む頭を押さえる。


『な、何でって聞いてエエか?』

『えぇよ?英語ができんかったけん。そこの子供にバカにされて、物を取られて、大喧嘩して向こうの親も何かやな感じだった。おいてやってんだって。自分の家は良い所だって……うわぁぁ‼あの、おばはんだぁぁ‼ゆうにいちゃん‼助けてぇぇ‼』


 兄のベッドの下に潜り込む少女と入れ替わるように、


「失礼。私。日本の高校の生徒を、ホームステイさせてあげている者なのだけど。乱暴を働いたその生徒が逃げ出して、探しているの」


化粧の臭いが頭痛を悪化させるようで、頭を押さえる。


「言いなさい‼あの子供をどこにやったの‼」

「う、うぅぅ……」

「あの子を誘拐したと言う事で良いのかしら?ヤードを呼んでも……」

「失礼」


 女性の背後からウェインとヴィヴィアンが現れる。


「あら、祐也?どうしたの?」

「ヴィヴィアン……香水……気分悪……」


 口を押さえる祐也に、ヴィヴィアンが、ナースコールをする。


『どうしました‼』

「ミスター祐也が気分が悪いといっています‼吐きそうだと……」

『解りました‼』


とすぐに二人の看護師が駆けつけ、一人が嘔吐した祐也の処置をする。


「どうしたんですか?」

「祐也が香水が気持ちが悪いと言っていました」


 ヴィヴィアンは訴える。


「それに、私達は来たばかりですけど、その前から、祐也に食って掛かって……」

「食って掛かっていないわ‼私の家にホームステイしていた子がいなくなったのよ‼テレビで彼といたから、どこにいるのと聞いただけ」

「ほ、ホームステイさせてやっているって……その人は言いました。乱暴をして逃げ出した子供を探していると……」


 苦しげに祐也は言うと再び、気持ちが悪くなったのか看護師が背中をさする。


「させてやっている?嫌だわ……それって、その子やその家族に恩を押し売りするの?」


 ヴィヴィアンに、ウェインは下に隠れていた紅を見つけ、


『紅?何かされたの?』

『……英語ができないのを……馬鹿にされて、これだからイエローはって。人の物を盗るからやめてって言ったのにやめてくれなくて、喧嘩になったら、一方的にこのおばさんに罵られた……』

『向こうからやったんだよね?』

『うん。差別用語も言ったよ。自分達は偉いんだ敬えって言った‼それと……』


 うわぁぁん……


泣き出した紅を抱き締め、ウェインは、


「貴族階級だから?奉仕をしてやってるから?偉いんでしょうか?やってると考える自体が、愚かだと解らないのですね。すぐに、紅の学校を通じて、紅のホームステイ先を貴方から私の家に移しますよ。確か、子爵家の方でしたか?地位は行動を起こしてこそであり、他の人を蔑む材料にはなり得ませんよ。そんなに自分が偉いのなら、女王陛下に世界に自分が外国の少女に行った虐待や、差別をお伝えすれば良い‼」

「ま、まぁ、同じ貴族階級の……」

「貴族としての責務を果たさないそちらと、一緒にされたくはないものだ。帰ってくれ‼後日正式な謝罪を求める。そして本日中に紅の荷物を一つも欠けず、私の屋敷の者に渡して頂く。足りなければ……」

「私達がとったとでも?」

「その言葉で良く解るよ。紅は片言の英語で、身ぶり手振りで話す子だ。一生懸命の子に嫌がらせをしたんだね。最悪だ。さぁ、帰ってくれ‼祐也も具合が最悪だ‼」

「ちょっと待って頂戴‼」

「すみませんが、患者さんの体調優先です。出ていって下さい」


看護師は追い出した。

 そして、ウェインは、


『紅。こちらにいる教官の連絡先は?』

『で、電話……』


差し出された電話を受けとる。


安部あべさん‼又貴方は‼』

『すみません。始めまして。安部紅あべくれないさんの学校の教官ですか?私は、紅のお兄さんの友人のガウェイン・ルーサーウェインと言います。実は、紅のホームステイ先の家族が、紅が英語を話すのが苦手だと解ると、嫌がらせに差別用語や、自分は貴族で偉いからと言っていたそうです。そして、物をとったり、返してと言った彼女に暴力を。ですので、私の家でホームステイと言う事で構いませんか?』

『えっ?で、ですが決まりが……』

『紅は今、こちらで事件にあった兄の祐也の看病もしてくれています。祐也は半年の間留学予定です。こちらは、紅を歓迎します。ですので、決まりよりも、祐也と紅の為にお願いします』

『……解りました。では、よろしくお願いいたします』

『はい。こちらの連絡先をお伝えしておきますので、よろしくお願いいたします』




 紅ちゃんは、ちゃんとウェインの屋敷に滞在できるようになったのだった。

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