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第59話、祐也は目を覚ましました。

 所で、こちらも病院で、手当てを受けていた祐也ゆうやは目を開ける。

 ホッとため息をついたが、すぐにあの男に胸元を捕まれたことを思いだし、必死に胸元を探る。


『ゆうにいちゃん。これ?』


 付き添っていた妹のくれないが差し出してくれた、ブルーのプラチナのペンダントにホッとする。


『あ、ありがとう。紅』

『これ、綺麗だね。お家を照らす光、そして逆にお家で待ってるよっていってる感じ』

『……うん。そうかもしれない』


 受け取ろうとして、手が震えているのに気がつく。

 そして……その手をギュッと握り目の上に当てる。


『な、何で……俺は……。もう乗り越えたと思ったのに……もう、乗り越えなきゃいけないのに……』


 涙が、着替えられた部屋着の袖に染み込んでいく。


『怖かった……動けなかった……。ただ、逃げるか、柔道の技で投げ飛ばすかすれば……』

『それは無理だよ。恐怖と言うのは、そう簡単に乗り越えられるものではないよ』


 カーテンを開け入ってきたのは、ウェインと一人の女性。

 一瞬、もやっとしたものを感じた紅だったが、


『あれ?あぁぁ‼パディントンベアくれた人だ‼あの時はシンプルだけど、カッコいいパンツルックだったから、解らなかった‼』

『えっ?』


正装のドレス姿の美女は、颯爽としていて清清しい。


「初めまして。祐也。そして紅。私は、ウェインの友人のヴィヴィアン・マーキュリーです」

「ヴィヴィアン・マーキュリーって、あの、アーサー王伝説のグィネヴィア王妃役の妖艶な美女‼」

『エェェェ‼ヴィヴィアン・マーキュリーさん‼ど、どうしよう‼知らなかった‼』


 祐也と紅の言葉を通訳するウェイン。

 ヴィヴィアンはクスッと笑い、


「良いのよ。紅のあの可愛らしくて、必死に教えて下さいっていっているのが、嬉しかったわ。皆あのグィネヴィア王妃役のって言うのよ。役柄とはいえ、世界を壊していくような存在だもの……」


祐也の通訳を聞いた紅は、


『何で、壊したらいけないんですか?だって、物はいつかは壊れますよ?それにアーサー王伝説は、あきちゃんに聞きましたけど、ランスロット卿は本当に、グィネヴィア王妃を精神的な愛を誓い守り続けて、それを歪ませたのがモルドレッド。それでアーサー王伝説は終焉を迎えるんです。アーサー王は妖精によって妖精の国に、グィネヴィア王妃のことは調べているって言ってましたけど、消えたりもしません。それに、アーサー王伝説は様々な宗教や伝説が混在していてとても難しい題材で、あきちゃんはランスロットを演じたウェインさんやグィネヴィア王妃を演じたヴィヴィアンさんを凄いって言ってました。特にヴィヴィアンさんは複雑で貞淑なレディとして城を守る王妃に、様々な問題に悩みつつ、前を見るあの姿はとてもクール‼ってえっと冷たいって言う意味じゃないですよね?』


祐也の通訳を聞いたヴィヴィアンは、映画とは一転して、とても可愛らしい笑顔になる。


「ありがとう。Coolクールと言うのは、カッコいいとか素敵だって言う意味なのよ。その人にも言って貰えて嬉しいわ」

『でも、私から見ても、ヴィヴィアンさんはクールで、素敵です‼』


 紅の言葉に、


『ありがとう』


と返すが、すぐに心配そうに、


「祐也。ごめんなさいね。実は、今回のレセプションは私が主催のボランティアのものだったの。私や、ガウェインを初めとするあの映画に関わった人たちと交流をして、サインをしたりプレゼントをって……親のいない子供達に、楽しんで貰うイベントだったの。一応身元は確認していたのだけれど、あの男は私の知らないつてを頼って強引に入ってきたみたいなの……きちんと調べているわ」

「いえ、それは多分、思い出すのも嫌ですが、あの人の昔からのやり口です。あの手この手でコネを作って、それを強引にねじ込むんです。その知人の方に申し訳ない位です」


息が乱れる……何かを思い出したらしい。

と、


『あぁぁ‼ヴィヴィアンさん‼思い出しました‼こ、この本‼頑張って読みます‼そして、英語を頑張ります‼今度会う時には、ちゃんとお話しできるようにします‼なので、図々しいですが、サイン下さい‼この本を頂いたことが、イングランドがとっても素敵な所だって教えてくれたんです。ヴィヴィアンさんのお陰です。お願いします‼』


紅は本を差し出した。

 目を丸くしたヴィヴィアンは、今度はウェインから通訳をして貰うと本当に天女のように微笑み、


「紅……貴方こそ私にとってCoolだわ‼」


 そう言ってサインをし、テディベアにも、そして、祐也のバッグにもノートにもサインをしたのだった。




 それから紅は、必死に英語を学び、大学に進学せず、イングランドに留学する道を選んだ。

 そして、ヴィヴィアンとの友情はずっと続いたのだった。

今回登場のヴィヴィアン・マーキュリーと言う女性は、とても美貌で知られた女性と言う設定です。

北欧系の血を引いているので肌が白く、髪の色はプラチナブロンド、瞳は淡いブルー。

普段から綺麗で、でもワガママなお嬢様役が多く、今回も悪女と言われて悩んでいたと言う設定です。

続編のランスロットの話にも出ることになると、とても辛かったりしたのですが、くれないの言葉に、励まされたと言う感じです。

年は20才。

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