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第6話、顔が腫れているので、眼鏡はかけられないようです。

 少々疲れたように、椅子に寄りかかっている穐斗あきとの代わりに薬を受け取った祐也ゆうやは、行き来する人々の視線にがっくりとする。


 額にガーゼ、鼻にギプス……しかし、傷の為に前髪をあげた穐斗の、極度の近視で瞳が潤みコテンと首をかしげた姿は、どう見ても……、


「うわ~……アイツ、自分の顔があのボロボロでも整った、美少年って気づいてないのか?本気で」


呟く。




 一度入学直後、HRのメンバーで、未成年のためお酒は厳禁だが食事に行き、帰りにカラオケに行った。

 すると、他のメンバーはあれこれと珈琲や紅茶、ウーロン茶を頼むのだが、


「オレンジジュースを。なるべく果汁100%で……」


と言っている、ちんまりとしたクラスメイトに気がついた。

 周囲は、本当に高校受験から解放されたので髪を染めてかっこいいところを見せつけるのや、親からお祝いにとブランドもののバッグなどを見せびらかしている中、祐也とさほど変わらない普通にデニムとスニーカー、スウェットシャツの少年。

 茶髪のもじゃもじゃ天然パーマはあちこち跳ねて、前髪は長く、眼鏡も流行遅れと言うよりも、全く気にしていないらしい。

 近づいて隣に空いていた椅子を寄せ、


「おい、お前誰だっけ?俺は安部祐也あべゆうや。地元だ。お前は?」

「あ、うん。隣の県出身の清水穐斗しみずあきと。よろしく」


首をかしげ、にっこりする。

 顔は隠れているが、仕草は可愛い。


「おい、もしかして、姉ちゃんいるのか?」

「良くわかったね。うん。3歳上に。別の県の大学行ったよ。今は就職活動やめて、結婚準備卒業してすぐ結婚」

「はぁ?旦那見つけたのか?」

「うん。あの姉で大丈夫かなぁって思うけど、大丈夫でしょ……あ、ありがとうございます」


 店員が持ってきたオレンジジュースを飲む。


「あれ、お前、珈琲とか、紅茶とかは?」

「ん?あ、午前中は良いんだけど、午後に飲むと眠れなくなるんだ。僕」

「はぁ?そうなのか?」

「うん。カフェインは興奮剤でしょ?僕の体は過剰に反応するみたいだって」


 すると、横にいた数人の男達が、


「へぇーそうなんだ。反応?どんな?どんな?」


クラスメイト以外にも、彼らの高校時代の先輩達も加わっており、回りに集まる。


「えっ?えーと、大丈夫ですよ。ほら、皆さん歌って下さい。僕、聞いてますので」

「ほら、飲んじゃえよ。どうせ、今夜はオールなんだから」

「先輩の命令だぞ?酒は飲ませたらダメだが、珈琲位飲めよ」


と言う声が聞こえ、


「先輩……それに皆も。体質ってことで、やめてあげましょうよ。後で何かあったら、責任とれるんですか?」


と言う、祐也の声も空しく、拒否も出来ないまま飲んだ穐斗のその後は、実際思い出したくない悪夢である。


 いや、祐也は良いのだが、穐斗の黒歴史らしく、未だに話題にされたくないらしい。


「おい、穐斗。薬貰った。痛いだろ?飲んどけよ」

「あ、ありがとう……」


 自動販売機で買った水のペットボトルを開けて、手渡す。

が、ギプスのせいで飲みにくいらしく、手伝う。


「ありがとう……ちょっとずきずきしてたから……」

「ちょっと待て立つな。眼鏡もないのに」

「あ、買いにいかなきゃ……」


 店を考え始める穐斗に、


「おい、そのギプスで眼鏡選べるのか?痛みもあるし腫れもあるだろ?」

「あ、そうだ……え、どうしよう。大学……」

「しばらく、眼鏡なしで過ごせ」

「えぇぇ‼そんな……多肉植物の皆の顔位しか見えない……あ、それでいいのか」

「良くねぇだろう‼」


ボケの方向がかなりずれる相手との会話は、突っ込みも苦労する。


「しばらく、俺の部屋……だと、お前が『多肉植物~‼』って言うから、俺が、お前んちに行ってやる」

「う~ん……祐也の部屋に住むか、祐也を居候……どっちも嫌だ‼」

「わがまま言うな‼痛み出したり、他の怪我の部分もあるだろうが‼俺の家は実家だから兄弟多いし、鬱陶しいから、我慢しろ‼」

「……はーい……でも、布団どうする?一緒に寝るのは嫌だよ」

「一回家に戻って、兄貴にでも積んできて貰う」


 一応、ワンルームマンションである。

 何とかなるかと思われる。

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