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第57話、その頃、日本では……。

「あ、おとうはんらがつくわ。空港いかな……」


 紫野むらさきのの言葉に、


「あの、わしらも、行ってもかまんかな?道知っとるし……」


麒一郎きいちろうの声に、


「かましまへんやろか?運転はあてがしますきに」


と、晴海はるみただすと共に空港に向かう。




 運転は丁寧である。

 助手席の麒一郎は、道を教えつつ……。


「……風遊ふゆは一人娘やないんよ。他にも息子も娘もおるんです」

「そないでしたか?あてらは、だいちゃんが結婚する相手が風遊はんやいうて、来たんですよって」


 紫野はあっさり言う。

 その言葉に苦笑し、


「他の子は、風遊が子供を連れてもんた言うて、恥ずかしい言うて……やつれ果てて、乳飲み子と自分が産んだんじゃない夏樹なつきを連れた風遊を責めて……最初は、わしも何で自分を苦しめて、自分を辛い目におうて分かっとんのにといおう思っとったんよ。やけどいわなんだ。言うたら、風遊がおらんなる思て……必死に、助けてくれるんは『故郷』やと思とるのに、突き放したらいけん思て、『ようもんてきた。お帰り』言うて……ほんなら大泣きよ。小さい未熟児に近い穐斗は晴海が抱いて、ほんなら、他のは罵ってなぁ……出ていったわ」


 病院の中で買ってきた缶コーヒーを手の中で転がし、


「でもなぁ……夏樹なつきが芸能界に入ったら、ちやほやしてなぁ……それで、夏樹も傲慢になったんかなぁ……昔は、もっとお転婆やけど、かの髪の毛のようにキラキラした、テレビで見る不細工な顔やない笑顔で笑いよったのに……『じいちゃん‼』言うて……」

「まぁ、そういう子もいますよってに。それより、気になるんは、風遊はんの兄弟は……」

「息子は婿養子に入ったんよ。上の娘は結婚しとる」

「こういうんを聞くんは失礼やと思いますけど、財産は?」

「取り尽くされた後なんよ。さきさん」


 苦笑する晴海。


「二束三文。それに、生活できる田畑以外、全部生前分与や言うて、持って行ったんよ」

「……じゃぁ、醍ちゃんが婿養子に入っても、向こうは文句いわしまへんなぁ」

「と言うか、逆に、醍醐だいごさんに申し訳のうて……借金はないけんど、代わりにあるんは……」

「逆に、その方が安心やと思いますわ。向こうが何言うてきても、ビシッと断ったらええんです」


 紫野は言い切る。


「おとうはんもおかあはんも優しすぎるよってに……まぁ、醍ちゃんがおったらかまへんやろ」


 空港の入り口に車を止め、すぐに荷物を抱え現れた二人に、


「おとうはんもおかあはんも、はようおのり‼中で」


挨拶を始めようとする親たちを押し込み、走り出した。




「おとうはん、おかあはん。風遊はんのおとうはんの麒一郎はんとおかあはんの晴海はん。で、すいませんなぁ。あてらのおとうはんの嵐山らんざんと、おかあはんの櫻子さくらこ言いますのんや」

「こ、今回は、本当に本当に……」


 言葉をなくす麒一郎に、嵐山は、


「いえ、穐斗は、もう、あてらの孫で、麒一郎はんは醍醐の父親よって……」

「だんさん……夫は口下手ですよって……あてらは、あきちゃんや風遊はんや皆はんと家族どす。家族はなんかあったら駆けつけるんが当たり前。そうでっしゃろ?だんはん」

「……そ、そうですわ‼」


 麒一郎と手を握る。


「だ、だんだん……ありがとう……」

「晴海はんも、お疲れやありまへんか?」


 櫻子の言葉に、


「疲れたなんて言うとったら、櫻子さんもようきて……本当にだんだん……嬉しいわ……」


涙ぐむ晴海を抱き締める。


「あ、醍醐くんのお父さんお母さん、こんにちは~‼」


 糺は、声を掛ける。


「写真持ってきたんですよ~‼もう、風遊さんが綺麗やし、醍醐くんかっこえぇし、あきちゃんが可愛いし……」

「スゥちゃんべっぴんはんやったがな」

「キャァァ‼ひなちゃんに送らないかん」

「はいはい。ノロケんといてんか、独り身寂しいわ……て、ん?あ、スゥちゃん、悪いけどスマホお願いできんやろか?」


 手渡されたスマホを操作すると、


「もしもし、糺です‼」

「あぁ、スゥちゃん?あてや、シィや。なんかな?こんうちのもんや言うて、えっと、富野とみのって言うおいはんがきよってなぁ?」

「富野?」


その名字に麒一郎と晴海は険しい顔になる。


「で、ここのおとうはんとおかあはんの部屋に上がろうとしよったんよ。でなぁ、まーはんに来てもろて、帰ってもろたんや。大丈夫やったかなぁおもて、言うとこうと」


 糺が伝えると、麒一郎は、


「息子や。何かあると、あぁやってきよる。財産ほとんど持ち逃げしとるのに……」


それを聞いた標野しめのは、


「そら、向こうがあかん……色々しときまひょ。おとうはんらは心配せんとあきちゃん心配しいや」


と電話を切った。


 双子の紫野は知っているが、相当えげつない仕返しを考えている標野だった。

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