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第56話、ウェインは祐也の出生について、紅に聞かされました。

 イベントの会場は騒然となる。

 ヤードとともに、倒れたままの祐也ゆうやを病院に運ぶ為、すぐに先程の車が戻り、運び込む。


『ゆうにいちゃん‼ゆうにいちゃん‼大丈夫だよ‼ゆうにいちゃん‼』


 泣きながら血の気の失せた兄の腫れた頬を撫でる。


 ウェインは電話を掛け、病院と実家、そして会場の主催者に伝える。

 そして、


くれないちゃん……』


テディベアを握る手が震える。


『ウェインさん……あのさっきの人な?ゆうにいちゃんの本当の父親なんよ』

『はぁ‼父親?でも、ご両親……』

『うちの父さんの妹さんが母親。やけんね、血筋からしたら従兄弟。でも、戸籍上は兄弟なんよ』

『……養子縁組?』

『うん』


 紅は俯く。

 隣に座り、何かあった時にと思っていたウェインに、


『さっきの取材陣……本当は昔にちゃんとしとかんと……しておかなくてはいけないことを、ようやく調べてくれたんよ。あのおっちゃん、エリート官僚で揉み消したから。あのね?ゆうにいちゃんの国籍はカナダ。父親が外交官僚で、外国を転々としてた。おばちゃんは東京で、あの人に逢って、子供ができたから結婚。で、ついていくことにしたんよ。向こうの親が冷たくて、いいとこのお嬢さんと見合い話を幾つか用意してたから「堕ろせ」とも言われたんだって』

『なっ……‼』

『でもね、結婚して着いていっても、暴力は振るうし、酔っぱらって悪態……それに、外国でしかも、自分の夫がこうです、何て言えなくて……で、離婚することになって、連れて帰ろうとしたら取り上げられたんだって。それから、気に掛けながらもいつかは迎えに行くって働いてたら、優しい人と出会って結婚。息子を引き取るって電話を掛けたら、その時はオーストラリアで、向こうも再婚してて……電話が切られたんだって。手紙を送ってもダメで、うちのお父さんに相談に来たの。叔母さん、妊娠してたから』


 ウェインは背中を優しく撫でる。


『お父さん行ってみたら、あの人と再婚さんとその人の子供がいたのに、ゆうにいちゃんだけがいなくて……『どこ行ったんぞ‼』言うて問い詰めたら『知るか』って、慌てて警察に駆け込んで探してもらったら、首都から反対側の小さい町に、ヒッチハイクでいっとった。お金も貰えずに、電話も手紙もダメで……家族に暴力受けてて……怯えてた』

『……‼』

『お父さんが訴えて、おばさんの家にもし連れて帰っても怯える。私やお兄ちゃんやひめのいる……お母さんも何でもコーイの人だから、大丈夫って、国籍は成人してから決められるけど、『自分の子や、二度と会わせるか‼』って連れて帰ったんよ。最初は怯えてて、でも外には出られないゆうにいちゃんを庭で遊ぼうって、で、ちょっとずつ学校にも行き始めて、でも、余り深く人と付き合わなかったゆうにいちゃんが、『転んだから連れてきた‼』ってあきちゃん連れてきて、それから変わってきたのに‼』


 ポタポタ……悲しみか喜びか……祐也の頬に落ちる滴。

 その温かさに、ウェインはポッと胸に温もりを感じる。

 この少女の優しさに……祐也と穐斗あきとの運命の出会いに……。


『あきちゃんが病気だって聞いてビックリしたし、それより前に、ゆうにいちゃんが何にも悪くないのに、あのMEGメグのせいで大騒ぎになって、お父さんたちもあきちゃんの家にいるって安心していたら、ゆうにいちゃんの電話番号を、あの人がどこかから手に入れて脅したんよ。『お前は恥をかかせる気か‼こっちにこい。揉み消してやる』って。何が悪いの?揉み消すって自分の都合のいいことでしょ?ゆうにいちゃんの何が悪いの?』


 しゃくりあげる少女を抱き締め、ウェインは、


『大丈夫だよ。紅ちゃん。絶対に悪いようにしないよ‼揉み消したりもさせない‼』

『でもっ!』

『これ以上、祐也も穐斗も辛い目に遇わせないよ‼絶対に。これは、僕の約束だ』

『……ありがとう……。ウェインさんが一緒で良かった……』


紅の泣きながら笑うそのくしゃくしゃの顔が、何て愛おしいんだろうと胸の中の蕾が一つフワッと開いたのを、ウェインだけが知っていた。




 病院に運ばれた祐也は、後頭部を強くではないものの打ち、そして、殴られた際の口の中の傷と、掴み掛かられた際に爪でえぐられた首と胸の傷があり、全治2週間と診断を受けたのだった。

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