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第51話、翌日には出掛けますが、その前に……。

 日向ひなたがモルガーナに話を聞いたり、古い書物を読みつつ、何とか情報を得ようとしていたが、幾ら日向でもネイティブではなく、その上現在のように印刷ではない本もあり、


「おい、祐也ゆうや。何冊か読んでみたが、頭の中が混乱する。頼む……」

「あぁ、いいですよ。何か気になる本ありました?」

「それが古い本で、今の印刷ではなく綴り文字……俺は一応習ったが、ここまで流暢というか、繋がっていると……」


お手上げといわんばかりに首を振る。


「……本当だ。でも、解ります。読んでみますね」


 受けとり、居間に歩く。

 夕食は、ウサギ肉の料理である。

 その前に……。

 居間についた二人は、ウェインとモルガーナ、そして、


『何でモルガーナ‼来るなっていうのよ~‼ずるいじゃない‼』


とキャンキャンわめく声に、日向は眉を寄せる。


MEGメグはいつまでも、アホなんだな」

『何て言ったのよ‼』


 振り返り叫んだMEGは、つい少し前に会った弟の友人たちに気がつく。


『あんたたちのせいで、あたしは‼何であんたたちがモルガーナとウェインの所にいるのよ‼』


 その言葉に、日向は、


「逆に言いたいな。あなたたちのせいで祐也は騒動に巻き込まれ、穐斗あきとは生死の境をさ迷っている。どうしてくれる?」

『日本語で喋りなさいよ‼』

「国籍がイングランドなら英語で話しましょう。で、何でここにいるんです?」

『日本語で喋りなさいよ‼年下の癖に‼』


 ムカッ‼

眉を寄せた日向は、


「年下だから命令してもいい?バカだな、あんたは‼穐斗が辛い思いをしているのに、この様か‼風遊ふゆさんは立っているのもやっとで、必死に看病を続けているのに‼いい加減にしろ‼自分本意の考え方を捨てろよ‼このオバさん‼」

『な、何か、悪口を言ったわね‼訴えてやる‼』

「その前にこっちが訴えてるけどな」


 せせら笑い、あきれ果てたと言いたげな、ウェインを見る。


「ウェイン。モルガーナさん。このMEGは追い出して、良いもの見ませんか?もう、Japanismジャパニズム満載の写真と映像ですよ」

「えっ?」

「家族写真です。と言うことで、家族じゃないMEGさんは帰って下さい。ウェイン。のろけじゃないけど、俺の妻も一緒に撮ってる。見て欲しいんだ」


 頬をうっすら赤くして照れる友人に、これは見てみたいと、追い出したのだった。




 そして、


「何か気持ち的に疲れたわ。どうして、穐斗は会いに行ったら英語で話してくれるのに、あの子はあんな風なのかしら。風遊のお父様やお母様も、簡単にではあるけれどお話しして下さって、私も日本語を話して……とても暖かかったのに、あの子が来ると心がささくれだって……姉妹でも辛いものね」


ハーブティを出す。


「家族写真というのは?」

「あぁ、現像はしていないのですが」


とノートパソコンをテーブルに乗せる。


「祐也も見ろよ、ビックリするぞ」

「ビックリ?」


 3人で画面を見ると、まずは、シックな黄色で裾がグリーンの振り袖で立つ風遊の写真。

 ほんのりと薄化粧に、髪を纏めて微笑んでいる。


「まぁ‼素敵‼風遊。何て綺麗なの‼」

「この着物は、俺の親友の……この二枚目の写真の、醍醐だいごのお母さんが似合うだろうと選んだそうです。で、醍醐は20歳。京都の菓子舗の三男で、風遊さんに一目惚れしてアタックしてました」

「へぇ‼彼もクール(格好良い)だね」

「で、これが……」


 画面が変わると、お人形のような日本髪の横顔の少女の写真。

 裾が長い、ピンクの桜の着物に、帯は長い。

 長いまつげは半ば伏せられ俯いている。


 ドキッと、祐也の胸が鳴った。


「キュートだわ‼この子が日向の奥さま?」

「この次で解りますよ」


 次に移ると、正面の少女の全身写真。

 はにかむように笑い、首を傾げている。


「穐斗だ‼」


 祐也の声に、モルガーナとウェインは食い入るように見つめ……、


「まぁぁ‼本当だわ‼でも、何て可愛いの‼風遊に似ていて可愛いわ‼」

「わぁぁ……いやぁ、うん、穐斗は昔から可愛かったけれど、こんなに可愛いとは思わなかったよ」

「で、次が、俺の妻」


写真が変わると、ただすは、ブルー系の着物に身を包み微笑む。


「糺と言います……」

「糺と言うと、日向。日本の小説を穐斗が贈ってくれるんだ。その中に『日向糺ひなたただす』という小説家の小説が入っていて、メモにはサインつきだよ~‼ってあったんだけど、『日向糺』って、彼女?」

「あ、実はそうなんだ」

「えぇぇ‼実は、あの小説の大ファンで、僕は日本語をある程度読めるけど、英語に翻訳して欲しいなぁって思ってるんだよ。こっちの友人に読んで欲しくて」

「そうなのか?糺も喜ぶなぁ……じゃぁ、本人が翻訳も大変だし、俺が翻訳して……っていうのも、良いかも」

「ありがとう‼その時は、僕がお願いしたってメッセージ添えるから‼で、サインも貰う~‼」


 その言葉に、


「ウェインはいつも書く側じゃないか」

「違うよ~‼僕は本当に俳優でも若手。先輩に戴いて、先輩のような俳優になるぞってサイン帳を大事にしてるんだ。糺と日向のももらわなきゃ‼」


 アハハ‼


4人は笑う。


「で、風遊さんのご両親と6人で。この前日に、醍醐がプロポーズに、ご両親にご挨拶したんだ」

「素敵……本当に暖かい家族っていう感じだわ」


 この後数枚は、醍醐と風遊が仲むつまじげに微笑んでいる写真、そして、穐斗が醍醐に内緒話をしているのか耳を寄せる写真などがあった。


「キュート‼素敵だわ‼何て暖かい家族なの‼」

「本当だ。……だからこそ、穐斗が元気になって欲しいね」


 親子の呟きは祈りでもあった。

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