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第46話、イングランドの荘園の暮らしです。多分。

 朝、何故かしっかりした装備のウェインが、朝食を食べている。

 服装も、着古したコートなどではなく、しっかりとしたデニムや、皮をなめしたベルトをつけている。


「何をしてるんだ?ウェイン」


 日向の問いかけに、ウェインはニッコリと、


「ウサギを狩るんだ。そんなに大きな獲物じゃないから、装備は軽装だね」

「ウサギを?遠くまで行くのかな?」


祐也の問いかけに、外を示す。


「そこのガーデンだよ。犬たちにウサギを追わせて、射つ。それだけ」

「ガーデンって、庭……」

「あぁ、違う違う。道沿いに幾つかいばらや色々な樹で作られた生け垣で囲った場所があるんだ。そこはもう少ししたら、山に放していた羊を戻す。その前に、生け垣の根元に増えたウサギをある程度獲っておくんだ。ウサギは可愛いけど、増えると本当に羊のこれからの食料の草を荒らすからね。それに、その事で僕たちの冬の食料になる。ウサギのお陰で夏の間は草を食べて貰って、綺麗になる。ウサギは天敵から隠れる生け垣を得る、循環だね」

「それはいい循環だな。日本の山は今猪や鹿の害で困ってる。邪魔はしないから見てもいいかな?」


 祐也は頼む。


「あぁ、良いよ。でも、血とか大丈夫かな?」

「あぁ、それは大丈夫。牛とか解体したことあるし……」

「牛か‼すごいなそれは」


 アハハと明るく笑い、


「じゃぁ行こう」




 装備を整え着いていくと、庭師ガーデナーと呼ばれる、敷地内の別の家に住む、生け垣の手入れや道、そしてハーブ園の手入れをしている専門の職人が、犬を数頭つれて待っていた。

 そして、目的の場所に到着すると犬を離す。




 犬は鼻が利く。

 その為あちこちに匂いの着いたウサギを追跡し始め、そして、ウサギが飛び出してくる。


と、ウェインは、麒一郎きいちろうの持っていた銃を構えると撃った。


 パンっという音と共に、逃げていたウサギが跳ぶ。


 跳ねるのではなくポーンと飛ぶのだ。


 多分命も共に飛ぶのだと、祐也は思いつつ、弾を込め、数度撃ったウェインの姿とウサギ、そして犬の動きを見つめていた。




 庭師が獲物のウサギを犬をつれ持っていく。


「あのウサギは?」

「皮をはいで、肉を今日の食事。残りは保存する為に燻製にするのと、犬にご褒美だね。皮はなめすよりも、あの毛を利用する為に加工に回して、冬のマフラーや帽子にするんだよ。でも、こっちでは使わないね。街に出ていくのさ」

「はぁ、そうだなぁ。ウサギなら毛皮は手入れすればいい。質は最高なんだし」

「何か考えてるの?」

「あ、あぁ。猪がね。今、じいちゃんたちの山を荒らすんだ。銃の資格を取って、何とかしたいと思って。料理に、骨や毛皮はごわごわしていたなぁ……」


 思い出す。


「あのごわごわ……ウサギとは違うし、使えないなぁ……」

「う~ん。毛皮じゃなくて皮は?それに獣避けに、髪の毛をネットの袋にいれたり、使わなくなった服なんかを枝とかに引っかけておくと、警戒心の強い獣は逃げるよ」

「えっ?」

「こちらなら狐とか特にね。荒らされたら困る、鳥の雛とかいる小屋にもつけておくんだ」


 その言葉に、


「それ、いいな。理容師の人の店に頼んでおいて、定期的に貰ってくればいい。臭いが消えても、燃やせば臭いがするし。あぁ、ウェイン。ウサギをさばくの見に行ってもいいかな?鹿と牛と猪はあっても、ウサギに鳥はない」

「あぁ、いってくるといいよ。祐也は何でも知りたがるね」

「と言うか、それ位しか、出来ないんだ……」


ほろ苦く微笑み、ガーデナーを追いかけていった同じ年の青年に、


「僕にしてみたら、そこまで穐斗や風遊姉さんに何とかしたいと思う、祐也の方が尊敬だね。僕よりも『高潔の騎士』ランスロットに近いじゃないか……」


と呟いたのだった。

これは、前に、イングランドの荘園をテーマにしたテレビ番組で、ウサギを狩っていた様子が強く印象に残っていたのです。


庭師ガーデナーさんは約100年ほど前、ヴィクトリア女王時代の貴族の屋敷を支える職です。

今回は、ウェインは忙しく、荘園の管理をガーデナーと呼んでいる家族に頼んでいると言う設定にしています。

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