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第44話、イングランドに穐斗の異変の話がもたらされました。

 インターネットは繋ぐのに一日かかると言われ、その日は部屋に案内された。


「……何か、モルガーナさん。貴族ですよね?普通の家のように感じますが?」


 壁紙は優しいベージュ、暖かみのある木目の木々を利用した家具とベッド……。


「普通の家よ。と言うか、本宅はあるのだけれど、堅苦しくてここにほぼいるのよ。夫は仕事もあって本宅にいるのだけれど……私とウェインをパパラッチから守る為に必死よ。申し訳ないわ……」

「で、でも、モルガーナさん。俺……今一応、穐斗あきとの家に間借りしているんです。でも、妻も町暮らしより、山に住みたいと言っていて、古い家を譲って貰うのもいいなぁと思います。俺が知ってるのはマンション住まいで、家って言うのは憧れだったので……まぁ、古い分修理とか必要だとは思うんですけど、そうしていると愛着がわくような気がしますよね」


 日向ひなたの言葉に、モルガーナはニッコリと頬笑む。


「そうね。そうやって大事にする程、家も嬉しいと思うわ」

「えぇ?じゃぁ、俺もどこかに引っ越さないと……隠居は風遊ふゆさんと先輩でしょ?穐斗はあの部屋で……」

「いや、お前は穐斗といろ。お前が片手に抱いてるそのアンジュ……穐斗に似てる。絶対似てる‼」


 誉めて貰っていると思っているのか、嬉しそうにパタパタと尻尾を振っている。

 その抜けた所に日向は呆れる。

 と、日向のスマホが鳴った。


「あ、すみません」


 移動し電話をとる。


『あ、もしもし?スゥ?どうしたんだ?』


 ただすかららしいが、段々、日向の表情が固くなっていく。


『えっ?何だって?穐斗が倒れた?何時だ?うん……うん……』

『えっ?』

祐也ゆうや。ひなは何をいっているの?穐斗って聞こえたわ?」


 モルガーナの問いかけに、


「あ、穐斗が倒れたと言っています。すみません。言うのが遅くなってしまって。実は、穐斗は……『性分化疾患』と診断されたのですが、でも、主に言われている疾患には当てはまらないんです。主な疾患は母親側がその疾患の保因者……疾患になりやすい家系だったりするのですが、風遊さんの家系にはその疾患の家系ではなくて……その為に調べに来たんです」

「『性分化疾患』……『性同一性障害』とは違うわよね。風遊の家系ではなかったら、こちらの家系だわ……もしかしたら。あの妖精物語……」

「ウェインも言っていました」


電話を切った日向が、


「穐斗が目を閉じて呼吸は浅いが、揺すっても呼び掛けても目を覚まさないらしい。街の病院に連れていっているらしいが、連絡を取り合っている主治医も、原因が解らないといっているらしい。おい、祐也。お前だけでも帰って‼」

「……いえ、しばらく俺はここに残ります」


ためらいつつ続ける。


「穐斗に今会いに行っても、無理です‼目を覚ましてくれないと思います。それよりも、穐斗の病気の原因と、折角荘園に招いて貰っているんです。こちらの荘園の生活を向こうに生かせないか考えます」

「祐也‼」


 日向の責めるような呼び掛けに、祐也は俯き、


「帰りたいです‼帰って、起きろと言いたいです‼でも、ダメです‼今の五里霧中状態で帰っても、穐斗は目を覚ましてくれない‼笑ってくれない……名前も読んでくれない……」

「……祐也……」

「先輩は帰って下さい‼そして……」


言いかけた祐也の言葉を遮り、


「俺は戻らない。俺が帰っても意味はない。俺の専門は中国史であって、医者じゃない。それならここで調べるしかないだろう。お前一人ならまた落ち込むかだ。一緒についていてやる」

「せ、先輩……」


と、モルガーナが穏やかに、


「じゃぁ、穐斗の病は直せないかもしれないけれど、白魔法使いとしては、ある程度のお手伝いをさせて貰えるかしら?姉として……何とかしてあげたいのよ」

「本当ですか‼」

「えぇ。ここと向こうの暮らし……それに、癒しの力を……」




 二人は選択する。

 遠い国に残り、穐斗が目覚めるすべを探すことを。

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