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第43話、イングランドの白魔法使いモルガーナ様です。

 しばらく進んでいくと、丘があり、そして小屋にいばらなどの樹が壁になった道になり、そのまま車は進んでいく。

 そして、抜けると、手入れがされた可愛らしい花壇とガレージ、そして、家族と数人の客人が生活できるような、さほど大きくはない屋敷と言うよりも家に到着する。


「ガレージに車を入れるから、外に出てて。荷物はあとでだそう」


 ウェインの一言に、二人は降り、そして荷物を出すと着いていく。

 すると、玄関につく前に扉が開き、金髪碧眼……ウェインに良く似た美貌の女性が姿を見せる。


「ようこそ‼祐也ゆうや日向ひなたね」

「はじめまして。祐也です。穐斗あきとの親友です」

「はじめまして。日向です」


 抱き合うスキンシップと言うのは、日向には慣れないが、ぎゅっと抱きつかれると、風遊ふゆに良く似た香りがした。


「さぁさぁ、長時間の旅は疲れたでしょう?中に入って休憩を。荷物は用意している部屋においておくようにするわ」

「ハーブティを振る舞うのが家の習わしと言うか、母が、白魔法使いなんだよ」


 ウェインの言葉に、日向は、


「えっ?回復の術とか……ですか?」

「それに近いものもあるわ」


 モルガーナは頬笑む。


「でも、本来の白魔法使いの役割と言うのはハーブや薬草を用いて痛みを和らげたり、リラックスや、疲れをとる手助けをすることよ。もし、一気にあなたから疲れを取り上げると反動で、あなたは倒れてしまうわ。疲労と言うのも、本来はよいことなのよ。一日働いて、アァ疲れたなぁ……と思うと、その疲れや一日考えていたことを、リセットしようとして、それが眠りへと繋がるの。そうして、目を覚ましたら朝日を浴びて、じゃぁ、今日も頑張ろうと思えるでしょう?」

「あぁ……そうですね。私も、数日ですが、穐斗の家で力仕事とか手伝いをして、あぁ疲れたなぁ。でも、心地よい疲れだなぁ……と、筋肉痛にならないようにだけして、眠りましたが、いつもよりも朝もスッキリしてました」


 モルガーナは頷く。


「そうそう。そのお手伝いを私がするのよ。それに、お話を聞いたり……相談窓口ね」

「あぁ、昔聞きました。そうなんですね。イングランドでは残っているんですね」

「えぇ。さぁ、まずは体が強ばっているのは、同じ姿勢に、血行が悪くなっている証拠。まずはそれをとるハーブティを」


 モルガーナに連れていかれたのは、暖かな暖炉のあるリビングになるらしい空間。

 暖かい色の家具やソファが置かれている。


「ウェインもお座りなさい。アンジュは後よ」

「アンジュ?」


 祐也と日向はウェインを見る。


「恋人?」

「ダメダメ。この子は、引っ込み思案で、いないのよ」

「母さん‼」

「アンジュは、最近貰った子犬よ。猟犬の子犬だけれど、ビクビクしていて兄弟に苛められていて、これはダメだって、お隣の荘園の方が持ってきたのよ。ウェインも猟はするけれど、猟犬はちゃんとしつけられるけれど、その子は石でコロン、他の犬たちに飛ばされてコロンでもう、これは猟犬に向かないって、家で飼っているのよ……あら、来たわ。アンジュ」


 壁からちょっと顔を出して首をかしげる子犬。

 ジャック・ラッセル・テリアらしい。

 ジャック・ラッセル・テリアは狐狩りに改良された犬であり、小型犬とも中型犬とも言われ、大体体重は3キロから5キロしかし、勇敢な犬である。

 主に白地に茶色のぶちの、コーギーに似ているが、脚は普通の犬程度に長い。

 で、白地のぶちと言うのは、穴に飛び込んだジャック・ラッセル・テリアを引っ張り出す時に目印の為である。

 しかし……、


「クルンクルンのモジャモジャだな……」

「ジャック・ラッセルは毛の短いのと、長くてストレート、長くてパーマなんだ。おいで、アンジュ」


ウェインが声をかけると、喜んで突進してくるが、絨毯のすみに引っ掛かり、ずべっと転ぶ。


「……」

「………」

「ご、ごめんよ。普通のジャック・ラッセルはこんなドジではないんだよ。この子だけ……アンジュ。大丈夫かい?」


 声をかけると、今度は慎重にと言いたいのか、ヨチヨチと歩いてくるのだが、今度は日向の靴にぶつかってへろへろとなる。


「……猟犬には、向いていないと思う」

「俺もそう思う」

「でも、ここでは猟に出さないと、処分される」


 ウェインはへろへろでも何とかやって来た子犬を誉めて、頭をなで、ごほうびをあげる。


「だから何とか、この子をどうにかしてあげたい。もしダメなら処分……ジャック・ラッセルは、猟犬だけあって、運動量が小さくても相当必要なんだ。大型並みで、朝晩1時間は運動が必要だから、街には向かない犬なんだよ」

「なら、検査に時間はかかるかもしれないけれど、日本に連れて帰るよ。家には、幾ら犬がいてもいいし。この子は」


 ひょいっと抱き上げ、


「あ、女の子だ。クルンクルン。喜ぶよ、穐斗が」

「えっ?いいのかい?」

「うん、と言うか、MEGメグがブームで飼ったミニチュアシュアウザーを面倒見ないって言うことで、風遊さんが連れて帰ったから今3頭いるんだ」

「MEGも……命を飼う責任を考えろと思うね‼」


 ウェインは珍しく、強い口調でいい放つ。


「じゃぁ、その子を日本に送る手続きは父に頼むよ。僕も忙しくなるし……」

「仕事かい?」

「そう。映画が良かったって言うことで、ランスロットを再び演じられることになったんだ。本当は『トリスタンとイゾルテ』もあったんだけど、トリスタン役の彼も上手かっただろう?」


 そう言えば、トリスタン役の俳優も中々で、どちらが助演男優賞を取るかといわれていた。


「で、今度は僕の方の話と、トリスタンの話を撮るんだ。……日本に行ったら、会えるかな?」

「もちろん‼……あ、思い出したんだけど、風遊さんが結婚することになったんだ」

「えっ?」

「まぁ‼」


 ウェインとモルガーナは喜びの声をあげる。


「相手は?」

「俺の友人の醍醐だいご。婿養子に入るって」

「えぇ?日向の友人ってことは僕とも年の差ないんじゃないのかな?」

「20だよ。でも、猛アタック‼実家も反対よりも逆に応援していて、醍醐の両親が喜んでたらしい」

「それはおめでとうって伝えないとね。母さん」

「そうね。嬉しいわ」


 ハーブティを飲みながら会話をしていた彼らには、遠く離れた日本のことはまだ伝わっていなかった。

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