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第39話、祐也の家族に、情報が伝わりました。

　大原嵯峨（おおはらさが）が連絡をすると、最初は、せとかが電話をとった。

　せとかは、祐也（ゆうや）にとって母である。

「あら、大原さん。今回は色々とお世話になりまして……」

『いえ、私も仕事と言うよりも、祐也くんは本当に優しくてええ子ですね。あ、私は京都出身なんですが、えぇ子は本当に素晴らしい子っていう感じですか』

「でしょう？本当に親バカですけど、家の祐也は可愛いし、照れ屋で体は大きくなっても……」

「お袋、お袋。祐也自慢すんなや、恥ずかしい‼それよりも、急ぎやないんか？大原さんは」

　祐也の兄の一平（いっぺい）は、実は糺（ただす）とHRが一緒の３年生だが、弟程賢くはなく、見た目は細いが筋肉馬鹿（←一平本人の自己評価）。

　空手と柔道の猛者である。

　夢はオリンピック選手とのたまい、親にぼこぼこにされた前科がある。

　母親から変わった一平は、

「あ、すみません。父が今日は病院待機で、はい。俺が話を聞きます」

『あ、そうですか。実はですね、祐也くんの携帯電話に、電話を掛けてきた人がいるんです。この方はご存じですか？』

　名前を聞き息を飲む。

「ちょ、ちょっと待って下さい。そいつ……いえ、その人は、祐也の電話を何で……」

『それが、曖昧ではあるのですが、祐也くんはLINEをしていないでしょう？大学の友人の方が、取材陣に漏らしたのではないかと……一応、あるはずがないと思いましたが、サークルの方は否定され、今、実は穐斗（あきと）君の家にいるのですが、穐斗君のご家族も……』

「穐斗のお母さんやおじいちゃんたちはそんなことしません。それよりも祐也は‼」

『怯えて、どうしよう、どうしようと泣いていたのを、穐斗君の遠縁の方が電話を折り返しかけて下さって、二度と電話をしてくるな。警察に連絡すると。で、その前に私が来たので事情を伺った後、警察には連絡済みです。内容は、祐也くんが退学になったのは恥だとか、家には戻れないだろう、こちらに来いという脅しですね』

「な、何だってぇぇ‼」

　一平は弟と一応血はある程度近いが、弟ほど賢くはなく、そのぶん切れやすい。

「アイツ‼大原さん‼電話番号を教えて下さい‼電話を掛けて……」

『いえ、それだけではなくて、もう一つ情報があるのですが、これを聞いてから、相手の方をお兄さんの拳よりも表からも裏からも、世間に顔向けできないようにしたいと思うのですが？聞いて頂けますか？お父さんには後で書類と共にお伺いした時に……』

「世間にって……」

『実は、一平さんの後輩の松尾（まつのお）君のお兄さんと私は友人なんです。で、松尾君はご存じの通り、京都の菓子舗の３男で……その菓子舗に長年ご贔屓の常連さんがいるのですが、その方のお孫さんに縁談がありまして。そのお相手が外交官僚で、お名前を……』

　名前を聞いて驚く。

　叔母の前の夫ではないか‼

『しかも、結婚歴を偽っていて、離婚歴一度、子供はいないと告げたそうです。それで後日結納と言うことだったようですが、離婚歴を偽り、子供はいないといっておきつつ、裁判で祐也くんに近づくなと命令を受けておきながら、呼び寄せようとする……これはおかしくはないでしょうか？どうでしょう』

「おかしすぎますね。大原さん。あのっ！祐也には……家があるんです‼祐也には穐斗の実家だけでなく、この家も‼」

『解っていますよ。祐也くんは、お父さんお母さんと呼ぶのは安部家のご両親で、実のお母さんの事は叔母さんと呼んでました。お兄さんや妹さんの事も嬉しそうに……で、実は、取材陣がこっちにも来る可能性があるようで、今、祐也くんは友人のガウェイン・ルーサーウェインさんの所に行くと、イングランドの方に』

　その言葉に、

「は、はぁ？ガウェイン・ルーサーウェインってあの、イングランドの俳優の？」

『はい。伺った所、穐斗君の甥だそうです。電話で仲良くなったそうで、そちらの荘園にしばらく身を寄せるそうです』

「そ、そうでしたか……はぁ、はい。解りました。よろしくお願い致します‼」

電話を切った一平に、

「お兄ちゃん？ゆう兄ちゃんは？」

妹の紅（くれない）と媛（ひめ）に、

「何か……祐也。イングランドの俳優のガウェイン・ルーサーウェインと友人なんだってさ」

「えぇぇぇ‼もしかして‼」

紅は高校の友人から送られてきたLINEを開ける。

「な、何かね？コレコレ‼この間ほら、ガウェインの弟さんと叔母さんとおじいちゃん？がある家に押し掛けて、乱暴を働いたってで、謝罪会見の途中で、何かね……」

　媛が、ネットを開けて示す。

「ほら『ユウヤ・アベ』って言ってるの。学校で、うちのゆう兄ちゃんじゃないのって聞かれて、でも、アベユウヤって一杯いるよってことで終わったんだけど……」

　一平は流暢な発音と声に、明るい声で、

「これ、祐也だ。昔、英語のテストが欠点でなぁ……付きっきりで見て貰った。それよりももう一つ。これは言うなよ？」

何々と近づいてきた母達３人に、

「祐也にあいつが、脅迫の電話掛けてきた。追ってくるっていうんで、ガウェインが自分の領地にって誘ってくれたらしいわ」

「えぇぇぇ‼あの時あんなに‼」

「お母さん‼大原さんに」

「裁判でギッタンギッタンのめちゃめちゃの刑に‼」

母と妹二人も……イングランドの美貌の俳優よりも祐也を愛しているらしい……と一平は思い知ったのだった。

すみません。

せとかは愛媛県のブランド柑橘です。

一平兄ちゃんは本当は甘平（かんぺい）にしたかったのですが却下して、呼びやすく、脳みそ筋肉兄ちゃんになりました。

紅（くれない）と媛（ひめ）は愛果○号という品種の柑橘があり、番号忘れた～その品種の糖度が一定以上がブランド柑橘の紅（べに）マドンナとなります。

一定以下でも0,5以内のを媛（ひめ）マドンナと言うブランドで流通しています。でも、媛もめちゃめちゃ甘いです。

紅い実が本当にきれいです。

あとは、はるかとはるみ等があります。