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第4話、これが、鼻骨骨折の手術です。

 あっさりと呑気に、穐斗あきとは言うが、鼻骨骨折の手術は負担の少ない、入院のない楽な手術とはいえ、リアルで怖い手術である。

 その為、神経質な人や子供は全身麻酔をかけて受けるものである。


 穐斗は処置室に連れていかれ、麻酔薬を浸したガーゼを鼻の中に入れられた。

 そしてじわじわと麻酔が効いていき、感覚がなくなる30分から一時間程度待つと、医師が取り出したのは、


はさみ?」


 付き添いとして着いていた祐也ゆうやが青い顔で問いかける。


鉗子かんしだよ。大人しくして。骨が折れてずれているから、外からこの鉗子で挟んで元の位置に戻すから」

「えっ?挟むって……」

「この指をいれる部分の間……鋏だと、上下の部分が当たるところに、ロックがかかる仕組みなんだ。だから挟んで、ロックしてお腹などを開けた手術等で、一時的に血管を止めたり、患部を挟んだりもする。今回は折れてずれた骨を元の場所に戻す必要があるから……って、君は付き添いには向かないね」


 床に座り込んだ祐也を見下ろす。


「すみません。無理です……穐斗。頑張れ……俺外で待ってるわ」


 出ていった青年を見送り、患者を診た医師は、逆に唖然とする。

 何故か、楽しそうな顔である。


「怖くないの?」


 一応聞いてみるが、うんうんと首肯く。

 興味津々らしい。


「えーと、じゃぁ」


 医師は、鉗子で外から骨をはさみ、元の位置に戻すと、鼻の中にガーゼをパックして、鼻の外からギプスを当てる。

 大体15分前後の手術に、


「大丈夫だったかな?」


と問いかけた。

 すると少年は紙に、さらさらと文字を書いた。


『鉗子は、母が使ってるので』


「お医者さん?」


『いえ、テディベアを作っています』


と文字で答える。


『テディベアの布をひっくり返す以外に、こんな風に使うんだと、面白かったです』


と書いてのけた穐斗を、医師は大物だと思ったのだった。




「悪い……気持ち悪くなった。大丈夫か?」


 出てきた穐斗に近づいた祐也は、ギプスをはめ、カルテを示す穐斗を見下ろす。


「ん?薬?」

「いだみどめ」

「あぁ、痛み止な。大丈夫か?」


 穐斗はカルテを示す。


「何々?今日は月曜日だから、木曜日の午前中に来るようにって書いてるな」

「ガーゼをとるみだい」

「ガーゼ……そっか、解った。その時も一緒に来ような」

「いいど?」

「と言うか、お前のその怪我、俺が原因だし」


 フラフラしている穐斗の手を引き、近くのベンチで休ませると、その間に受け付けにカルテを持っていく。

 こういう所は世話好きと呼ばれるゆえんである。


 申し訳ないなぁ……と思いつつ、一時的にではあるものの貧血に、簡単ではあるものの手術も少々堪えていた。

 ついでに言うと、額も、膝もついでに身体中痛い。

 だと言うのに、頭のなかをぐるぐる回っていくのは、


「うぅぅ……がえっだら、この顔……多肉植物さん達にごわがらでたらどうじよう……」


……これが、清水穐斗しみずあきとである。

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