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第39話、こっちにも送られたようです。

「はぁ?シィさん、又何のいたずらや」


 日向ひなたは呆れたようにため息をつく。

 長距離飛行機の中では一時的に使えない時はあっても、無料の無線LANが繋がっており使えるようになっている。

 タブレット、パソコン、スマホを持ってきていた日向に、動いていた祐也ゆうやが、


「どうしたんですか?」

「いや、さきさんとシィさんに無理矢理番号交換させられてなぁ。って、ゲッ!容量が大きいもんが‼」


送られてきたものに、ウイルスがないか確認後、


「無料のこの時で良かったわ、って、何や。『お前も、これくらいいうてきぃや~』って、ムカつくわ‼」


言いながら操作をすると、映像が流れ始める。


「……あ、そうか、プロポーズが行きしなやったしなぁ……」

「はぁ、かっこいいですねぇ……あぁやって言い切る所、羨ましい。俺は見た目ばっかりで……」

「19のお前が、言うな。俺だって20才やぞ?愚痴るし、スゥとも喧嘩ばっかりや」

「えぇぇ?そうなんですか?」


 意外と言いたげな祐也に、日向は、


「幼馴染みやって言っても、育ちが違うやろ?それに、最近になって……いや、ほたるまつりに言った後からやなぁ……俺の方が何か、馬鹿らしなってな。と言うか、俺は年下なんが悔しいて、旦那だ~‼言うて言いたくなるし、でも、スゥにとっては俺は年下ってのは関係ないんだ。ただ、男だから女の自分に言うことを聞けとか命令して欲しくない‼昔の怖がっていた自分に戻りたくないって言うのがあるみたいで……その頃は、原稿の締め切りが続いてて喧嘩も多かったな。離婚までは考えなかったけれど、スゥは自分の部屋にとじ込もって泣いてた時もあったし……」


思い出すと辛いと言いたげに表情を曇らせる。


「でも、あのほたるまつりの後で、泊まらせて貰った時に、スゥが……言ったんだ」

「スゥ先輩がですか?」

「あぁ。『あのね、風遊ふゆさんが言ってたんだけど、ほたるは雄が光を放って、恋人を探して、そして、命を残して死んでしまうんだって。私は、ひなちゃんが探してくれて、一緒にいようって言ってくれて、本当にうれしいなぁって思うの。蛍みたいにキラキラした光とは違うけど、ひなちゃんは私にとって本当に傍におりたいなぁって思う暖かいひなたみたい』……ってな……すまん。のろけるつもりはなかった」


 照れを隠したかったのか、眼鏡の位置を直す仕草をする。


「良いじゃないですか。先輩達ももどかしかったんですね。あの時一緒に見たほたるも、きっと喜んでいるんじゃないですか?」

「そうだと良いが……それよりも、電話してきたんだろう?どうだった?」

「あぁ、いえ、一応繋がったんですが、何か、モルドレッドと、日本にいられなくなったMEGメグ穐斗あきとのあの父親が、イングランドでめちゃくちゃやり玉に上がってるみたいです。日本にもいられなかったし、イングランドに戻ったらパパラッチで……。あ、ガウェインとモルガーナさんとは話ができました。ガウェインが自分の領地に行くから、空港で待ってくれるそうです」

「領地って、ランズエンドに近い所か?」

「そうですね。地図によると……」


 地図を広げ、ロンドンを示した後ランズエンドをしめすと、


「この辺り……あぁ、ここですね」

「はぁ、ロンドンから離れているんだな」

「ロンドンは好きじゃない。そういってました。ごみごみしていて嫌だったそうですよ?」

「ふーん……アルビオン?」

「イングランドの事ですよ。古い国名ですね」


祐也は告げる。


 日向は心の中で舌を巻く。

 表向きは従順な大型犬っぽいが、腕っぷしだけでなく、頭の回転も早いし記憶力も良い、言葉も何ヵ国語もしゃべられる。

 オールマイティな人間である。

 大学でも秀才と言われていた日向も醍醐も、実際、この年下の青年に敵わないことが多い。

 ただ、別の意味で叶わないのは、穐斗との関係……どうみても、言っては悪いが、同性に好かれる要素は多いが、本人自体が同性を好きになる要素がない。


 ただ、物書き業の妻を持つ夫としては、時々、


「書けないぃぃ~‼ほたるは触れたけど、虫は無理~‼ひなちゃぁぁん‼虫って足何本~‼」

「なんのだ?」

「揚羽蝶の幼虫‼」

「そんなの知るかぁぁ‼触手と言うか、芋虫って書いておけ‼」


と言い合いをしたばかりの為、恋人を見つけた蝶が祐也で、まだ幼虫のフニフニがムグムグとタチバナ科の木の葉を食べている……それを言うと糺は『気持ち悪い~‼』と半泣きになるのだが……の穐斗をサナギになるまで待って、蝶に羽化するのを待っているように見える。


「そういえば、揚羽蝶のサナギは……」

「永遠を意味しますね。確か。生まれかわりや、何度も転生するとも……どうしたんですか?」

「……最近お前の記憶力のよさが、羨ましいと言うより腹立たしい……」

「えぇぇ?わ、悪いことしましたか?」

「いや、一瞬殺意が芽生えただけだ。それと、そのアゲハチョウの餌になるタチバナ科の木々でタチバナだが、醍醐のご先祖の姓だ」

「『右近うこんたちばな左近さこんの桜』昔は、桜ではなく梅だったそうですね。紫宸殿ししんでんの前に広がる庭に……」

「そう。奈良時代の4つの姓の一つと言われていたが没落した……」


 二人はあれこれと話しつつ、仮眠をとったり、食事をしたりして、飛行機の旅を続けたのだった。

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