第35話、心の成長を閉ざしていた穐斗が、サナギから羽化しつつあります。
帰りの運転は、醍醐が慣れておきたいからと乗り込んだ。
すると、さほど荒くもない運転で進んでいく。
「穐斗それに風遊さん?」
再びぐったりとした穐斗が、後ろの席で風遊の膝枕でぼんやりと、
「はい、おとうさん?」
「無理しなくていいよ。一応、紹介しておくね?瓜二つだけど、髪の毛の癖があって、左側が跳ね上がっているのが紫野兄さん、右側が跳ねているのが標野兄さんや。まぁ、いつも一緒だから、おじさんでいいからね」
「おじさんかな⁉」
「酷うないかな?あてらは‼一応、9才違いやろうがな‼」
「いや、あにさんらは4月1日生まれやろ?穐斗は3月31日生まれや。ほぼ10才や」
醍醐は説明する。
「つまりまだ18。それに、体が弱くて華奢な子や。苛めたらあかんで?」
「18にも見えん‼」
「舞妓はんのべべが似合いそうやなぁ」
「何で、そっちに行くんやろ」
呆れる醍醐に、
「あ、僕、お母さんの結婚式の白無垢姿が見たいです。僕。スゥ先輩のも。ドレスも可愛いと思う。お母さん着てくれる?」
「えぇぇ?うちはもう36やのに、白無垢は無理やわぁ」
「いや、早く着て貰いたいですね。スゥ先輩もひなを急かして、一緒にどうです?」
「まってぇぇ‼スゥちゃんは20才で、可愛いやろうけど、うちは無理や‼」
首を振る風遊に、母を見上げた穐斗は、
「ええなぁ……僕も女の子やったらドレス着てみたいなぁ……お母さん、淡い色似合うし。着てや~」
「……えぇ?穐斗、着たいんかね?」
「うーん……えっと、写真撮りたいなぁって」
エヘヘ……
顔色は悪いのだが、頬を赤くする。
「一枚だけ。お嫁さんのかっこうして、一緒にとるんよ。それだけでええ」
「それだけ言うて……」
言葉を失う母親に、醍醐がにこにこと、
「じゃぁ、一緒に写真を撮りましょうか」
「せやなぁ。あきちゃんは可愛いさかいに、似合うと思うわ?」
「家のおかあはんは、ようなげいとったさかいに……娘が欲しかったのに、可愛らしゅうない子らと、可愛らしかったのに言うて。可愛らしないんは醍ちゃんやな」
「な何言うてはるんでっか。兄さんらでひょ?よう似てはるんで、二人で悪さばかりしてはって。それよりも白無垢に、ウェディングドレスに……穐斗は可愛らしいんがお似合いやと思う。ぎょうさん撮って貰わなあかんなぁ」
穐斗は目を丸くする。
「ぎょうさん言うて、ドレス一枚……」
「何言うとん。家のおかあはんは娘ができる~‼それに、可愛い孫が~言うて自分の若い頃のべべをぎょうさん出してきて、あれでもないこれでもないて、幾つも部屋に出してはったで」
「写真を、あてらのスマホから現像してなぁ……回りんとこやおかあはんの実家や従兄弟にみせよったなぁ」
「あきちゃんが、醍ちゃんに髪を直してもろて、眼鏡を外して目ぇパチパチしよるんを見て、『あての孫や~‼可愛らしかろ?あきちゃん言うんよ』言うて自慢しよらぁい」
「で、あきちゃんと風遊はんがぎゅっとだっこしてにっこり笑とるのを引き伸ばして、かざっとったなぁ」
「えぇぇぇ‼うちを‼おばはんやのにどないしよう‼」
風遊を振り返り、双子は声を揃える。
「「いややなぁ、風遊はんはあてらよりも若う見えるわ。最初、スマホ見た時に『どこのお嬢はんや』言うて、おとうはんもおかあはんも年聞いて、あきちゃんがおるて聞いてビックリしよった位や」」
「そ、そんな……」
「いやぁ、姉妹やと思とったしなぁ。あては」
「いよったなぁ、さきは」
「で、シィは、あきちゃん可愛らし言うて……」
双子は顔を見上げて笑う。
「醍ちゃんは、ええ人見つけたなぁ」
「そやなぁ。あてらも見つけな、おとうはんもおかあはんも、怒るがな。どないしよう」
「兄さんらは、兄さんらで努力しぃや。あては、風遊と穐斗を大事にする言う役目があるんや」
醍醐は、上に上るカーブを切り、家に向かっていったのだった。
書き直しています。
自分でももう少しなんとかできないかと、思っていたのです。
元の原稿は残していますが、自分としては一気に脱皮と言うのも、納得がいかなかったので、もう少し、虫は苦手ですが、『アゲハチョウ』のように美しい羽を広げてほしいものです。
 




