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第32話、強烈な個性を持つ双子兄ちゃん登場です。

 祐也ゆうや日向ひなたの取れた飛行機便は数が少なく、その前に到着する大阪伊丹空港からの便が到着した。


 いつもなら、無表情かそれよりも恐ろしい笑顔の醍醐だいごが、風遊ふゆと手を繋ぎ、ピョンピョンと跳ね回る義理の息子……性別未分化、その上着ているのは可愛いウサミミフードつきジャケットにデニム。

 鼻の怪我のギプスは少々気になるが、見た目はほぼ完全に可愛い女の子に分類されても構わない穐斗あきとをニコニコと見ている。


「穐斗くん。ぶつからないようにこっちに」

「はーい‼」


 近づき、醍醐の手を握り見上げる。

 一つ違いの筈だが、穐斗が幼いのか、醍醐が大人びているのか……。


「ねぇねぇ、先輩……醍醐さんの方がいい?お父さんはまだ早いよね?」

「どっちでもいいですよ?じゃぁ、私は穐斗と呼びましょうか」

「うん‼」


 その姿に、日向が、


「醍醐、もうすでに父」

「本当に仲良しですよね」

「お前もな。それ、お揃いのペアで、良いんじゃないか?上品やし、におとるで」


少々頬を赤くして、頬をカリカリとかく。


「いえ、穐斗に似合いそうで。両方渡すつもりだったんですよ?そうしたら、チェーンがもう一つあるからって……。昔、聞いたんですよ。19才の女の子にsilverの指輪を贈ると幸せになるって。俺は、同性愛とか否定しませんけど、自分は同性とは恋愛しないんだろうなぁとは思っていたんですけど、穐斗だけは特別で……」

「まぁ、俺も、そんなに恋愛に嫌悪感はないし、お前と穐斗の関係は何か特別な繋がりもあるし、応援したい。が、醍醐の兄貴達にはおぞけは増すな」

「は?そうなんですか?」


 筋肉隆々ではなく、バランスのいい体格の祐也と細身だが適度に筋肉のついた日向は、顔立ちもなかなか整っていて、美男子の部類にはいる。

 祐也本人は、自分の顔を平凡と思っているらしいが、好男子である。


 と、目の前に、うり二つ、動きは線対象、そして服装も同じ柄の色が対照的な……。


「うっわー、キモッ!」


 呟いた祐也に罪はない。

 髪型まで対照的、手荷物も左右に持つ様など意図的と言うか、そこまで揃えるか‼

と言いたくなる。

 ちなみに手も繋いでいるのも、気持ちが悪い原因のひとつである。

 ビックリしたのか穐斗も醍醐にしがみつき、恐る恐るチラチラと見る。


「「やぁ、だいちゃん‼元気そうやなぁ‼」」

あにさんら、やめてくれへんかなぁ?彼女も子供も怯えとるがな」

「「わぁ、久々の醍ちゃんの声。かわえぇなぁ」」


 声もイントネーションも一緒。しかも醍醐に手を伸ばそうとするのに、


「お、お父さん……僕、しんどい……」


醍醐の服の裾を引っ張り、必死に訴える。


「それはいかん。やすもか?穐斗。風遊さんもいこや」


 兄二人を完全に無視し、恋人とその息子の手を引いて歩いていく。


「「おーい、醍ちゃん‼」」

「いつまでも、20にもなる弟を、何やと思とんやろ。醍ちゃんやめや」


 嫌悪感丸出しで、日向がいい放つ。


「「はぁ?ひなやないか」」

「声揃えるんも、やめてくれへんかな?おっさん」


 日向は厳しい口調で繰り返す。


「醍醐はあんたらのおもちゃやないで?兄弟ではあるけど、20の成人した男や。その醍醐にベタベタ付きまとって、おっさんらはハエか?」

「なんやてぇ?」

「それに、28のおっさんが手ぇ繋いで出てくるだけで、キモいわ‼ついでに変態やな‼醍醐が嫌がる理由、それ位分からんのか‼兄弟やのに‼」


 日向につかみかかろうとする双子を、祐也は簡単に振り払う。


「おっちゃんら悪いんやけど、嫌がらせやめてくれんか?趣味の悪い格好で、しかも病気や疲労も溜まっとる穐斗や母さんに対して失礼やないか?」

「なっ?」

「京都でははよ帰れ言うて、ほうきを逆さにたてる言うん聞いとるけどな、その下品な格好でこられたら、この県の家にある箒を全部逆さにすんで?はよいねや言うてなぁ」


 祐也は自分よりも身長の低い双子を見下ろす。


「それでのうても、俺は最近続けざまに、おっさんらやMEGメグ、モルドレッドに嫌がらせ受けまくっとんやわ?裁判の準備も幾つも続いとって、急いでイングランドに行こう思とんで?その前に、お世話になっとる、醍醐先輩の兄貴やおもて挨拶しよ思とんのに、何やこれは‼」


 元々柔道や、肺活量もあり、声は大きいが、怒鳴り付ける声に迫力がある。

 しかも、嫌がらせのせいか英語で続ける。


『なぁ?おっさん?弟が自分の道を見つけたって言っとるのに、応援せんのか?あぁ?自分はええ歳やのに、跡を継ぎます。で?それだけでかまんのか?はぁ?和菓子職人は、職人としての腕を磨くだけやなく、人間性も磨けや‼アホんだラァ‼』

「えっと、早口で解らへんわ……」

「流暢やなぁ……」

「一応、祐也は、『醍醐が自分でしたいことを見つけたっていってるのに、応援するのが兄弟だろうが、それに、和菓子職人の跡継いだって言うのは腕も磨かないと行けないけれど人間性も磨け‼』だそうです」


 日向はため息をつく。

 この双子は、自分勝手な上に、マイペースである。


「でもなぁ?醍醐は大人しい子で、可愛い弟なんや」

「ええ子やし、でもなぁ、騙されとるとも思わん。逆に大変な目におうとる人らを支えたいていうんは、ええことや」

「やけどな?兄さんら、いつまでもあの醍醐にベタベタしまくって、どうするんで……あぁ、魔王降臨したが……」


 つかつかと近づいてきた醍醐が、


「祐也くん……穐斗がしんどいいうていよる。頼むわ」

「はい。行ってきます」


と、少ない荷物を持ち、離れていく後ろから、いつになく激しい醍醐の声が響いた。




「えぇかげんにせぇへんか?兄さんら‼えぇ?あての恋人とその子供を紹介しよ思たのに‼恋人の風遊さんは、本当に優しゅうて、このあてやひなもやさしゅうしてくれた。それに、限界集落である家におって、それでも『いっといで。疲れたらもんてきたらええわい』……いつでも戻ってきなさいいうて……体の弱い息子を抱え、血の繋がりのない義理の娘は奔放で、周囲に迷惑ばかり……シングルマザーやいうて、町では言うけれど、周辺のおじさん達に助けて貰いつつ子育てをしたから言うて、頑張りよる優しい人なんや‼」


 激しい口調、しかし優しく……。


「本当に、優しい人なんや。母親として、娘として、最高の人で、手を繋いだりするんは照れて……可愛らしゅうて……年の差とか、兄さんらは言うと思うけんど、あては絶対に風遊さん……風遊と穐斗はあての家族や‼口はさまんといてや‼」

「えっと、歳上……醍ちゃんの一つ下の子持ち……」

「それに、醍ちゃんの金目当て……」

「そんなんじゃないわ‼ぼけ‼そんなもんで、風遊と穐斗を下さいなんて言えん‼あてが言うたんは、年は違っても傍におりたい言うただけや‼一人でいってらっしゃいって見送るんやのうて、あても一緒に見送らせてくれ言うたんや‼」


 醍醐は睨み付ける。


「金目当てとか……風遊も穐斗も望んどらん‼あてもや‼3人で……風遊のご両親やひなたちと、回りの皆とおりたいだけや‼邪魔するんやったらおかえり‼」

「あ、穐斗?」


 日向が、近づいてくる後輩に声をかける。

 双子は記憶している。

 穐斗と言うのは、醍醐の一つ下の後輩であると。

 しかしてててっと走ってくる様が、19には……穐斗はまだ18である……見えない。

 醍醐にしがみつき、双子を見上げる。


「醍醐さんのお兄ちゃん‼醍醐さんは僕の家の人なの‼僕のお父さんになってくれるんよ、だからダメ‼お父さんやもん、あげん!嫌やもん。お母さん幸せにしてくれるって、お父さん言うたもん‼今まで一杯頑張っとった、お母さんを大事にしてくれるって言うたもん‼嫌やもん‼」


 瞳を潤ませる。


「わぁぁん‼嫌やもん‼お母さんを大事にしてくれんの嫌やもん。お母さん僕を生んだけんいかんの?シングルマザーやけんいかんの?僕が病気がちで、お母さん自分のせいやって責めよったのに、じゃぁ、僕が、僕がう……」


 醍醐は穐斗の口を押さえる。


「穐斗?穐斗がおらんかったら、私は風遊さんに会えなかったでしょ?穐斗があの時、お祭りに行こうって誘ってくれて、会ったんですよ?そして、夏にも何回か会いに行って、穐斗がいたから会えたんです。穐斗がいなかったら。風遊とお父さんは出会わないままです。穐斗がいてくれたから、こんなに暖かくて幸せなんですよ」

「お父さん……」


 うえぇぇぇ……

泣き出した穐斗の頭を撫でて、


「大丈夫。お父さんは穐斗と風遊とおるよ」

「うん、うん……」


 どう見ても一つ違いには見えない父と子は、血の繋がりではなく、もっと深い何かを得たのだった。

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