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第29話、穐斗の生まれついての疾患について、知ることになります。

穐斗あきとは‼」


 母屋おもやに駆け込んだ二人の前で、ほりごたつに入り、ぐったりとしている穐斗を見つける。


「すみません。ぐったりする前は、明日は向こうの病院にはいけないけれど、事情を説明して、鼻のガーゼを取って貰うんだと言っていたのですが……」


 普段はおっとりしているように見えて、かなり図太い醍醐だいごも顔色が悪い。


「病院に‼」

「いかんのよ……」


 細い声が響く。

 ただすに支えられつつ、現れた風遊ふゆが涙を流す。


「倒れるたんびに、病院に行っても、異常がないと言うよりも、クラインフェルター症候群とかいう病気や言うて……でも、うちのせいかと、なんぼ検査しても異常はない言うし、クラインフェルター症候群や言われても、穐斗自体の染色体って言うんは、おかしいことはないんよ」

「クラインフェルター症候群って……」


 日向ひなたはタブレットを操作し、出して見せる。


「えっと、『通常の男性の性染色体は「XY」だが、これにX染色体がひとつ、もしくは複数多くなり「XXY」等になる。姿は男性。第一次性徴までは普通の男児とさほど変わらないが、第二次性徴から胴体の成長は止まり、華奢で手足の長い細身の体型となる』……」


 祐也ゆうやの声を継いで、醍醐が、


「『声変わりしない。筋肉がつきにくく、運動能力が低い、体毛が薄い、体が弱く病気がち、気管支と心臓の病を抱えることが多い』……と言っても、まぁ、穐斗くんは、ほとんど当てはまるかもしれませんが、検査をしてもこれではないと言われたのでしょう?風遊さん」

「うん、でも、アンドロゲン不応症でもない、ターナー症候群でもない、原因不明やって……」


泣きじゃくる風遊に、タブレットを借りて英語等の専門の論文等を読んだりと操作をしていた祐也が、


「なぁ、母さん。ここには何か、母親側に保因者ほいんしゃ言うてほとんどが書かれとるんやけど、母さんは健康な女性やん。これ、この類いの病やないわ。父親側の病気やと思うで」

「えっ?」


今までずっと自分を責めてきたのだろう、風遊は呆然とし、ふらっと倒れ込む。

 醍醐が慌てて支え、


「風遊さん‼風遊さん‼」

「だ、だんだん……醍醐くん……祐ちゃん。うちのせいで、穐斗……」

「違うわ、絶対。やってなぁ……」


黙ったまま座り込み、項垂れている風遊の両親を見て、


「じいちゃんもばあちゃんも健康やし、元気やんか。ほれにもし、母さんがそんな重い病になるもんをもっとったら、その前のじいちゃんやばあちゃんも体が弱かったり、この年で寝たきりになっとるんか?なってないやろ?それに、ここの回りのじいちゃんばあちゃんみとうみや。皆元気やんか。そんな中で、穐斗だけ病気って言うんがおかしいんよ。向こうには連絡とったんか?母さん」

「う、ううん……時々、モルガーナに電話や手紙は送るんやけんど……こおうて……」


ボロボロと涙を流す風遊に、


「連絡したら、向こうのご両親はいい人らなんやけんど……厳格なイングランド貴族やし……そんな所に、穐斗のような病をもって生まれた言うたら、殺されたり……まではのうても、領地に連れていかれたら……うちは穐斗を苦しめとるんやろうか‼うちがあっちに黙っとったけん……穐斗は……」

「それも違うと思うんやけど……風遊さん」


糺は、おっとりと告げる。


「関係ないかもしれんけんど、うちなぁ……一応ええとこのお嬢さんやったんよ。でもなぁ、男兄弟ばっかりの一人娘やったけんな。毎日毎日、両親には女の子として、年長者を敬え、兄を敬え、男をたてろ、兄弟の命令ばっかりやったんよ。でなぁ……もういやや~‼思てたら、近所に1つ下のひなちゃんがおったんよ」


 夫を示す。


「最初は、兄弟みたいに怒鳴ったり、殴ったりかと思とったら、スカート姿で、二階から飛び降りようとしとったうちに、『逃げるんやったら、こっちに回って僕んちの屋根からどうぞ。窓開いてますよ。僕の部屋です。隠れてていいですよ』言うて。で、よぉ隠れにいったんよ。ばれても、ひなちゃんとこにいったらかまんわ~言う感じで。で、大きゅうなったら、ええとこのボンと縁を結ぶ為に言うて、お見合い結婚にまっしぐらや。嫌や~‼思うて、ひなちゃん所に逃げて、そのまま結婚してとんずらよ」

「とんずらはやめぇや。一応駆け落ち言わんか?」

「えぇんよ。どっちも同じや。で、今はまだ子供おらんけど、出来たら、風遊さんみたいなお母さんになりたいわ。あきちゃんなぁ。よぉいよったんで。『僕のお母さんは、世界で一番なんよ‼大好きなんや』言うて。うちは両親に恵まれんかったけんなぁ、羨ましいなぁって。で、ほたるまつりん時におうて、わぁぁって思たもん。向こうに帰ったら、あんなお母さんになりたいって。そしたら、風遊さん。来るたんびに、うちの娘や言うて……嬉しかったんよ‼」


 糺はにっこり笑う。


「やけんね?お母さんのせいじゃないんよ。責めたらいかんよ?あきちゃん悲しむで?なぁ、ひなちゃん」

「何や?」

「あきちゃんは寝とかんといかんし、お母さんやおじいちゃんたちはここにおらないかんけん。パスポート持っとるうちと、ひなちゃんでイングランドいかん?」

「却下‼」

「えぇぇ‼何でぇ?」


 頬を膨らませる糺に、日向は首をすくめる。


「俺と、祐也で行くわ。俺もある程度は喋れるけど、祐也程は無理や。スゥはお母さんらとおり。醍醐頼むわ」

「え、えぇ。解りました。私もある程度は……」

「真剣は出すなよ」




 日向と祐也は、ある程度の準備を整え、旅だったのだった。

今回は、昔読んだコミックスがきになって自分で調べた資料をひっぱりだし、もう一度調べ直しました。


医学的な名称は『性分化疾患』disorders of sex development(DSDs)


よく知られている言葉では、『両性具有』『半陰陽はんいんよう』です。


DSDsは「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」を指す医学用語。


単一の疾患ではなく、「アンドロゲン不応症」や「先天性副腎皮質過形成」「卵精巣性性分化疾患」「クラインフェルター症候群」「ターナー症候群」等があります。


「アンドロゲン不応症」は女性として育つことが多く、第二次性徴の頃にわかります。


「ターナー症候群」は染色体異常の1つで、女性として育つのですが、お母さんの妊娠時98%、胎児の段階で自然流産とありました。


元々、初期の設定の際に、妖精、神話等を盛り込んだ話にするつもりでしたので、穐斗は表向き男性として育ったと言う設定でした。

あまり丈夫ではない、体力がない、転んで大ケガもその設定のためでしたが、話が移り変わるにつれ、その設定が変化して、調べ直しました。

私は、病に対してや出生等の差別などは全くありません。

本を読んでいて興味があると徹底的に調べる人間です。

それに、自分自身が恋愛音痴のため、他の方が書かれる恋愛小説を乱読していますので、そういうのも気にしません。

今回は、調べていたらこう言う病気かもしれないと言われたという設定のために記載したことだけ、ご了承くださいませ。

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