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第28話、力強いサポートと、穐斗の病

 車で入っていき、小さい看板を見つけ、その道におれていく。

 すると、大きな駐車場と、小さい石段の上に立派なお寺があった。


「すごいなぁ……立派んとこや」

「行くぞ」


 日向ひなたについて歩き始めたが、すぐに、日向が足を止める。


「どうしたんですか?」

「ま、マリア観音……いや、地蔵菩薩やけど、それでも……隠れキリシタンの‼」

「あぁ、よう知っとるんですなぁ。こんにちは」


 階段の上に立っているのは、風遊ふゆと年の変わらない髪を剃った作務衣さむえ姿の男。

 いや、ここにいるのだから、


「このお寺の住職さんですか?こんにちは。安部祐也あべゆうや言います」

一条日向いちじょうひなたです。初めまして」

「だんだん。初めまして。私はここの副住職です。父が住職なんですよ」

「あぁ、聞きました。あの、これは……」


 日向は示す。


「そうなんですよ。これは、昔から道にあったんを移したもんです。父も普通の地蔵菩薩やとおもとったのに、昔、町の大学の方が調べに来て、マリア観音さんや言うことに。お二人も知っとると思うんですけど、ここは元々、そこかしこに山城があって戦いよったんです。それに、こっちやのうて、さっき来たと思うんやけど、下じゃのうて、逆に奥に進んでいくともっと険しいなるんよ。で、そっちの方には、平家落人へいけおちうど伝説言うのが残っとるんよ」

「はぁぁ……有名なんは、向こうの県にあるんはしっとったけど、ここにマリア観音さんがあるとは思わんかったです」


 日向に微笑み、


「寒かろう言うて、上で住職さんも見とります。車やけん、お酒は出しませんが、お茶でも」


上がっていく。


 境内は広いのかと思いきや広くなく、のぼって左に鐘堂。

 正面に本堂と、右手には住職さんたちの家があるらしい。

 しかし、


「お墓ないんですか?」


祐也はふと尋ねる。

 祐也の実家の寺にはお墓があり、先祖が奉られている。


「お墓は、その家の土地にあるんです。うちにあるんは、そこの位牌堂です。御位牌を納めとります」

「はぁ……地域によって違うんですね」


 本堂に上がらせてもらうと、手を合わせる。

 すると、


「ようきたようきた。穐斗んとこの友達の」

「アッ!ほたるまつりんときの、おっちゃん‼」


祭りの間中、顔を赤くしてお酒を飲みながら笑っていた、麒一郎きいちろうと友人の……。


「住職さんやったんですか‼普通の酒飲みのおっちゃんやと……」

「おっちゃんどころかじいちゃんやがな。よう来たなぁ。何かきいっちゃんに聞いたけんど、こっちに住む言うて、本当かいなぁ?色々見て分かっとると思うけんど、簡単じゃいかんのやで?ぼんよ」


 本堂の横にある20畳程の場所に、古い丸いストーブ。

 上ではシュンシュンとヤカンの中のお湯が、沸いた沸いたと急かしている。


「解っています。それに観光地化するのではなく、普通に生きられるようにしたいんです‼」

「大型スーパーとかか?道の駅か?」

「そういうんじゃないです。普通に……助け合いながら、生きられる道を考えたいんです‼」

「若い人もいない、いるのは高齢者。このままではダメです。だから、考えてみたいんです」


 二人は訴える。


「じゃがなぁ……そう簡単に、もうこんな風になってしもうたのに、できるもんかの?」


 住職の言葉に反論しようとして、祐也のスマホが鳴った。


「す、すみません」


 頭を下げ、外に出て電話をとる。

 その姿に、


「ほぉ、礼儀正しいノォ」


住職は呟く。

 すると、


「えぇ‼穐斗あきとが倒れた⁉わ、解ったけん。すぐ戻ろうわい‼」


障子を開けて、


「折角話をして貰とったのに……穐斗が倒れた言うとるんで、帰ります。又お邪魔します‼」

「かまんで、いつでもおいでや。その話、わしも気になるけんな」

「ありがとうございます……じゃのうて、だんだん。いんでこうわい」


二人は頭を下げ、帰っていった。


「本当にいなげな……変っとるのぉ。遊びに来ただけのとこを……やけど、今時の若いんは言うて言えんの。のお?ぼんよ」

「父さん……住職。いつまでも子供扱いやめてくれへんかなぁ?」

「昔は可愛い小坊主言うて可愛がられとったのに。集落のじいちゃんばあちゃんの為に言うて、手伝わんかい」


 父親は息子に発破をかけるのだった。

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