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閑話休題、異国からの手紙です。訳文でどうぞ。

 数日後、エアメールが届いた。


 祐也ゆうやは知っているが、現在ではなく、親の世代までは、アルファベットを綴りと普通と習っていたが、現在はほぼ一文字ずつ記載することが多い。


 しかし、今回届いたのは、外国暮らしが長かった祐也ですら感嘆するほどの達筆。


「あ、ウェインからや。わーい‼」

「えぇ?あの、ガウェイン・ルーサーウェイン?」

「うん‼」


 ハサミで綺麗に端を切った穐斗あきとは、便箋を広げ、


『取り急ぎ送るよ、アキト。

 僕の弟のレッドが、又、アキトやフユ姉さん、キイチロウおじいさんやハルミおばあさんに迷惑をかけたようで本当に申し訳ない気持ちで一杯です。それに、ネットで調べたら、又あのMEGメグが問題を起こしたんだって?アキトの友人の皆さんにも、会いに行って謝りたいよ。でも、行ったら逆にそちらにご迷惑になると、父も母も止めるので手紙を送ります。本当にごめんね。お友だちのユウヤとヒナタ、ダイゴ、タダスにもよろしくね。今度、内緒で会いに行くから、僕とも友達になってって伝えて下さい。では、短くてごめんね。本当にアキトが大好きなのに、嫌われたらどうしようかと心配です。又、今度。ウェインより』


読み上げる。

 昼食後にゆっくりとしていた周囲は振り返り、


「わぁ……とっても気さくなのね。ビックリしちゃった」


ただすは目をキラキラさせる。

 結婚しているとは言え、世界でも指折りの美男子俳優に『友達になって』は、かなりくる筈である。


 特に、夫婦で中国史を専攻しているとは言え、アーサー王伝説は有名であり、その主要登場人物でも美形で強く、その上円卓の騎士の第一の騎士ランスロットを演じきった演技力は素晴らしく、夫婦で何度も見ている位である。


「あ、メッセージだ。はい。糺先輩。ひな先輩、醍醐だいご先輩に祐也のぶん」

「さ、ガウェイン・ルーサーウェインのサイン‼家宝にしよう‼」


 日向ひなたの一言に、空気は緩む。

 祐也の受け取った紙は他よりも分厚く、広げて黙読する。


『初めまして。ユウヤ。

 アキトの甥になるガウェインだよ。ウェインと読んでくれると嬉しいな。それよりも、お祖父様や弟、MEGの騒動に巻き込まれて大変だと思うけれど、本当に、アキトが大変になった時も僕の代わりに傍にいて、支えてあげて欲しい。宜しくね。じゃぁ、又会えたら色々話してくれるかな?ウェイン』


「何かかいとった?」

「あぁ、ウェインって呼んでくれって。それと、特に穐斗はドジやけん、面倒見てくれやと」

「ウェインそんなん書かんもん~‼祐也の意地悪やぁぁ~‼」

「あはは、うそや」


 必死にポカポカ叩く穐斗の頭を撫でながら、笑うのだった。




 その後は、醍醐の猛アプローチをサポートしつつ、頭脳系と交渉系は醍醐と地域出身の穐斗に頼み、見た目は華奢だが頭脳、体力系の日向と共に地域の荒れた田畑や獣の侵入ルート、猟友会の人々や、地域の……祐也達には驚いたのだが、麒一郎きいちろうはまだ若い方で、その先輩や親の代もかくしゃくとしていて、婦人会や青年会にいたりする……そう言った人たちにも色々なことを聞いていく。


 最初は、


「街のもんやのに、首突っ込むのはおやめんさいや」


とか、逆に心配されたり、


「短期間でもんてしまうのに、やめときやめとき」


と言う言葉も聞かれたが、日向が真顔で、まだ、祐也ほどではないが、


「おいちゃん。俺、実はなぁ、嫁さんと駆け落ちしとって、いまだに許してもろとらんのよ」

「はぁ?あの、スゥちゃんやろ?」

「そうそう。スゥは、いいとこのお嬢さん。俺は近所の年下の一般人や。幼馴染みでなぁ。で、俺は大好きで、必死にスゥに釣り合うように勉強してな?家のばあちゃんがちょっと小遣いくれて、で、ばあちゃんの老後も大変やとおもて、ばあちゃんに言うて勉強しよった株にお金を出してもろたんよ」

「はぁ……」

「運良く付いてな。俺は別んとこ住んどったし、ばあちゃんに何かあったらいかんおもて、手ぇ尽くしてな、老人ホームに入居しとったんやけど、ここがわるぅて……」


胸を叩く。


「で、逝ってしもうて。ほんなら、俺のお袋も含めた親戚がなぁ、老人ホームに入ったばぁちゃんの財産を奪い取ろうとしてなぁ……情けななったわ。今まで面倒見んと、何考えとんじゃ言うて」

「大変やったなぁ……えと、日向ひゅうがいうて読むんかの?」

「いえ、日向ひなたです。スゥや皆には、ひな言うて呼ばれとるんです」

「あぁ、ぬくい、えぇ名前やなぁ」


 祖母の代の人々に言われ、照れる。


「最初は、可愛い言うて言われて、嫌やったんです。でも、ここに来て、こんなぬくい、日当たりのえぇとこが、俺の名前の意味か思うたら、自慢になって……」


と話している横で、別の人々に祐也は、


「それに、おっちゃんやおばちゃん。家族は?車とか大丈夫なん?それになぁ、風遊ふゆ母さんに聞いたんやけんど、車も長距離はきつうない?」

「子供らは皆、町よ。時々もんてくるけんどな」

「車もなぁ……よう、配られる県や市の公報にも、返納セェ言うとるけど、返納したら足がない。ここにはスーパーもないし、ガソリンスタンドも町に行くか、逆に海に走ったら、こんまいんが一つあるだけよ。病院も町。あるんは交番と郵便局、農協やなぁ。お寺さんとお社ならあるで」


初めて聞く言葉に、


「お寺さん……どこにあるん?」

「グラウンドの横の道を上っていきよったら、別の集落があってな?そこに小さいお社があらぁい。その横の道を入っていったらあるで?曹洞宗の寺や」

「曹洞宗……言うて……ひな先輩……」

「総本山は福井県の永平寺。禅宗や。禅を組んで、静かに目を閉じて悟りを開く。このへんには珍しいなぁ」


祐也は、


「そう言えば、わの実家は、真言宗……」

「俺は、臨済宗やな」

「そうかなそうかな。まぁ、住職さんは定年まで農協におったんよ。今度、ぼんさんが跡をつがぁい。今、ぼんさんもおいでるけん、いっとおみや。小さい看板があるで」

「はい。おいちゃん、おばちゃんもだんだん」

「いってこおわい」


歩いていく二人に、田舎のじいちゃんばあちゃん世代も、熱心な二人をただ優しく見送ったのだった。

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