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第2話、清水穐斗は、こんな少年です。

 穐斗あきとが毎日のように手をかける多肉植物とは、インターネットでの説明では葉、茎、又は根の内部の柔組織に水を貯蔵している植物の総称とあり、サボテンやアロエに近いものと思って頂けたら分かりやすいかと思う。


 しかし、サボテンのような全体、アロエのように脇にびっしりトゲトゲの姿ではなく、花のように葉を広げる様は愛らしい花に見える、花ではない植物なのだ。


 特に、穐斗の可愛がっているブロンズ姫は、少し暗めの渋い色の花のように見え、うさぎのかくれんぼは、細い茎に丸いふっくらした小さい葉が着いていて可愛らしい。

 黄麗は、黄色い花のよう……と一人一人の表情が違い、それがたまらなく可愛い。


 日々、その様子をチェックして、それから眼鏡をかけて、身支度を整えるのだが、穐斗の部屋には、ベッドと多肉植物の棚、冷蔵庫に本棚しかない。

 服はベッドの下のプラスチックケースに押し込んでいる。


 なぜプラスチックケースか?

 それは、先に独り暮らしを始めた姉が、段ボールにあれこれ詰めて置いておいた所、『ご』の着く4文字の生き物が大量発生し、


『穐斗‼出たの‼あれがぁぁ‼退治して‼』


と言うメールが何度も入ったからである。

 ちなみに、姉が住んでいる場所と自分の実家は海を隔てており、退治に行くまで時間がかかる為、冷静に、


『掃除しろ‼アホ姉貴‼『ご』は、何でも食べる‼段ボールは好物‼そんなもんに入れとくな‼居座られたくなければ、大掃除‼徹底的に綺麗にしろ‼』


と送り返した。

 弟は役に立たないと理解した姉は、恋人には部屋の汚さを告げられず、友人達に来て貰って片付けたらしい。


で、穐斗の部屋には、パソコンはなく、テレビも置いていない。

 一応、スマホがあれば生きていけるのだ。

 それと、学校で使う為のタブレットさえあれば。


 扉を開けた冷蔵庫のなかには、くじで当たったアイスカフェラテと、ポイントで交換した野菜ジュース……。

 どっちもお腹を満たさないが……と、カフェラテを出して、眼鏡を外し台所で顔を洗い、ついでにサイヤ人の頭を濡らしてタオルで拭いた。

 ワンルームなので、台所の後ろの扉を開けて、風呂場にタオルを投げ込んでおく。

 湿気がありすぎると、部屋がカビだらけ。

 それも、嫌である。


 しっかり扉を閉めてから、髪を手ぐしでばさばさとする。

 元々天然パーマで、髪が細く、長く伸ばしても色が抜けて、プチプチと切れる。

 その為、普段は坊主頭までは困るが、女性がベリーショートと呼んでいる位にしている。

 今は、切りにいっていないので伸びていて、水で濡らして拭いても、『寝癖?』程度は残っている。

 しかし、自分の身なりにあまり気を使わない穐斗は、普段のデニムと、フードつきのシャツである。

 コートを着てもいいが、学校まで数分。中は暑い。

 我慢する。

 そして、高校時代から使っている、やたらでかいスポーツメーカーのバッグを肩にかついで、いつものように出ていく。

と、その前に、充電器と共にスマホと、鍵を持って行くのともう一つを忘れずに……。


「行ってきます。皆。早めに帰るよ」


 声をかけて出ていった。




 クスクスとも、キャハキャハとも違う、サワサワとした何かが、広がったのを、穐斗は気がつかなかった。

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