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第16話、うつつか夢か……祐也にとってのうつつの間です。

 祐也ゆうやは『退学』の為、門の外でやりとりを続けていた。

 そして通学時間が落ち着いた頃に、親切な警備員たちが準備してくれたテーブルと椅子を片付け、喧騒も何のその、椅子に座ってうとうとと寝入っていた穐斗あきとを抱く。


「すみません。醍醐だいご先輩。ひな先輩。俺、一応退学だそうなので、手続きはしませんが、一旦ここから出ておきます。しばらく様子を見て……」

「そうですねぇ~……誰か来ましたよ?」


 退学処分を言い渡された為、あえて門の外で活動していた4人に、外から近づいてくるのは……。


松尾まつのおさん。一条さん。おはようございます」


 落ち着いた物腰の青年。


「あぁ、お久しぶりです~。嵯峨さがさん」

「いつもありがとうございます」

「大変でしたね。同僚がテレビをちょうど見ていて、ビックリしていましたよ。それで、お手伝いをと準備をしていたら、電話を。良かったです」


 優しく笑う青年を、醍醐は、


「嵯峨さん。この子が被害者の祐也くん。安部祐也あべゆうや君です。大学一年生の19才です。去年、私が実は歴史研究で、調べものをしていた時に案内をしてくれて、それからここで再会したんです。性格は見ての通り、世話好きでおおらか、友人を大事にするいい子です」

「あ、初めまして。安部祐也と申します。醍醐先輩たちには、弟のように可愛がって貰っています。今回はご面倒をおかけします。本当に申し訳ありません」

「いえいえ、それよりも、本当に大変な目に遭ったね……あぁいう番組も面白おかしくと言うのも良いだろうと甘く考えている節があるし、テレビ局は最近のチャラい学生のようにテレビに出ると皆喜ぶとか思い込んでいるようだね」

「面倒ですね。俺も穐斗あきともそんなの望んでないのに」


 渋い顔をする……と、日向ひなたが、


「おい、祐也。学長がこっちに来ている。穐斗も冷えてるだろうし帰れ。後は、こっちでやっておく」

「はい。じゃぁ、失礼します」


頭を下げて帰っていこうとすると、背後から、


「安部祐也君‼待ってくれたまえ‼話が‼」


後ろをついてきていた秘書が破ろうとした『退学通知』を、日向が止め、


「何をしているんですか?大事な大事な通知書でしょう?破って終わりにするおつもりでしょうか?」

「テレビ局の内容を精査せず、発表したものです。一時的にこの書類を取り下げて、再び正しい発表に切り替えます」

「すでに正式に発表しているものを取り下げる?精査する?意味が分かりませんが?」

「ですから、学生の君には解らないことがあるでしょう‼学校内で調査委員会を立ち上げますので、これを凍結したいのですよ‼」

「今さら凍結ですか」


 はっ!


と、あきれる横で、


「安部くん‼話し合いをしようではないか‼」


とバーコード頭が風になびくのを、笑いをこらえつつ、


「話をといわれても~、安部くんは退学処分を言い渡されましたし~、納得できない通知を出してくださった学長に話をといわれても~、ハイそうですかと、話に応じますかねぇ?」


と醍醐は正論をはく。


「だから、退学を取り消して……おい、破ったか?」


 振り返り秘書に聞いたバーコード学長の前で、スマホで撮影しつつ、退学通知を丁寧に外した青年。


「な、何をする‼」

「え?証拠隠滅をやめて頂く為に、私が外して、保管させていただきます。この格好で失礼します」


 紙を内側の胸ポケットに納めた後、ポケットから名刺を出す。


「すみません。一条さん、松尾さん。渡して頂けますか?そして、私は、今回の事件の被害者である安部祐也さんの弁護人、大原嵯峨おおはらさがと申します。では、こちらとテレビ局の件については私が安部さんの代理人でもありますので、私を通じてよろしくお願いいたします。そして、安部さんのご友人である清水しみずさんについても、私の同僚が共に対処させて頂きますのでよろしくお願いいたします。では、一条さん、松尾さん。又後で」


 スマホを操作して、情報を送ったらしく、すぐに電話を掛け、


にしき。いまのビデオは、大学長とその秘書が証拠を隠滅しようとした証拠なんだ。大事に保管を頼む」


そしてしばらくして、


「正式な書類は書いていないけれど、本人……安部さんから、頼むとお願いされている。安部さんは未成年だから、これから安部さんの実家に向かって、ご家族にお伝えするつもりだ。うん、うん。書類は持ってきているので、その代わり、情報を収集保管を頼む」


とカチャッと切った。


「では、ご本人もいるかな?ご実家に……どこだったかな……」

「あぁ、醍醐。こちらは私が。醍醐が案内してくれ」

「解りました。では」


 醍醐と嵯峨は歩き出したのだった。

人物紹介


すみませんm(__)m

学長の名前を考えるのが億劫で、高校時代に一度だけ授業を受けた日本史の先生をそのままイメージしています。

でも、髪型とあだ名だけで、先生ご本人はとても熱心で厳しいと噂でしたが好きな先生でした。


秘書さんは、男性。細身です。


大原嵯峨おおはらさが……若手でやり手の弁護士。醍醐の双子の兄ちゃんズの友人。でも、仕事を選ぶのは納得してから。前に、ただす日向ひなたの問題の時にもお願いしていた。


大原は、地名。

嵯峨も地名で、そして天皇のおくりなでもあります。



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