表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/101

第14話、穐斗の出生は……こうです。

 疲労感が漂う空間に、


「先輩方、祐也ゆうや……ごめんなさい」


べそをかく穐斗あきと


「姉が、あの仕事をしてるのを黙っていたのはわざとじゃなくて……姉は、性格があの通りで、父ににていて、大騒ぎになっちゃうんです……。それに、僕がいじめられッ子だったから……」

「と言うか、はた迷惑な人だな。穐斗は成長しているのに」


 日向ひなたの一言に、


「ブラコンって、厄介ですもんね~」


しみじみと呟く醍醐だいご

 醍醐も双子の兄たちに、何故か異様に溺愛されていて鬱陶しい限りである。


「本当は、姉に決められていた大学に来いって言われてて、絶対嫌だってここを選んだんです。皆は隣の県だから、海を越えて、別の県にって言われたんですけど、そうすると姉や父が来そうで……」


 グスンっと鼻をすする……が、痛そうで、祐也は、


「泣くな。手術の傷に触るぞ」

「でも、どうしよう……せっかく、父に居所隠してたのにばれちゃう……。帰りたくないよぉ」

「普通に、『父さん帰れ‼』で良いと思うが?」

「大丈夫?」

「と言うか、18になる息子にあれこれ言う親も親だし、迷惑なのは俺たちよりも、穐斗だろう?」


となだめる。


「それに、先輩たちも、お前のことは心配してても、嫌いじゃないと思うぞ?ねぇ?ひな先輩」

「まぁ、穐斗は私にとっては弟みたいだな。兄弟のいない私には可愛い、真面目で素直な弟だと思う」

「あー、私も~‼あきちゃんは私の弟よ」


 ただすも微笑む。


「本当にすみません。父があんなに厄介じゃなければ良かったのに……」

「そんなに厄介なの?」

「僕の父はお金持ちの一族で、長い歴史を持つ旧家なんです……。生まれてくるのは、女の子が多くて、男が少なく、父は祖父の遅くの子供で、ようやく生まれた男だったので喜ばれたんですが……」

「がって、何かあったのですか~?」


 醍醐の声に、


「父は、とても自分勝手と言うか、自分のしたいことばかりして、恋人は次々作るし、おじいちゃん怒って廃嫡寸前。あのマルガレーテ姉以外に、モルガーナ姉もいるんですけど、それぞれお母さん違うし……で、廃嫡の話が進みかけていたら、僕の母に会ったんです。初対面から母は父が嫌いで、『なんでこんなのを周囲は好きになるのよ。ついでに言えばこの男、ナルシスト‼好みじゃないわ‼』って言う感じで、でも父は、嫌がられる意味がわからなくて追いかけ回して、最後に僕ができちゃったと」


 ちゃったで良いのか‼


突っ込みたがる4人の前に、


「モルガーナ姉が結婚が決まりかけて、僕が生まれる前に、又父の浮気が始まって、で、愛想つかした母が向こうを飛び出して、日本に戻ってきたんです。おじいちゃんは、孫息子~‼息子の出来た嫁~‼って言うんですけど、母はおじいちゃんは大好きなんですけど、父のことがどうしても嫌で、イングランドに行くのをやめちゃいました」

「良いのか‼」

「うーん。僕は、おじいちゃんやおばあちゃんや、一族のおじさんたち大好きですけど……父が嫌です。五月蝿いし暑苦しいし。もういっそ、父と母が離婚して、父が再婚して、子供が生まれたら良いのにって思います」


穐斗の視線は周囲を見ていない。

 痛み止のせいと疲労で、大分現実逃避ぎみらしい。


『あぁ、生まれてくるんじゃなかった。多肉植物さんたちや先輩方、祐也がいなかったら……』


と呟かれては厄介と言うよりも、本気で逃避すると思われる穐斗に、醍醐が優しく、


「穐斗くん。大丈夫ですよ~?少ししてから帰って休みましょう。明日調子が悪かったら、確か重要な講義はなかったはずですよね~?祐也くんに存分に甘えちゃいなさいね~?」

「で、でも明日、確か祐也……」

「えっと、はい、合コンはキッチリキャンセルします‼」

「うぇぇぇん、ごめんね?ごめんね?」

「と言うか、その怪我に、お前のせいではないけど厄介事。一人じゃ無理だろ?」


実は本人も行きたくなかった為、幹事である同じ中学校の友人に電話を掛ける。

と、電話がすぐに繋り、


「おい、祐也‼テレビ見たぞ‼明日の合コン……」

「あぁ、それ、行かない」

「何でだよ‼LINEで回ってて、お前にあのMEGの弟を連れてきて欲しいって言うのもあってさぁ‼なぁ、MEGの弟連れてきてくれよ」

「そう言うのがウザいんだ‼じゃぁな」


電話を切る。

 再びかかってくるのは、その友人で……切ると、今度は高校時代の先輩方……。


「あぁぁ‼ムカツク‼何で、俺の回りはアホだらけ‼」

「僕も?」


 首をかしげる穐斗に、


「いや、お前はいいこいいこ」

「わーい‼」

「それなのに、中学高校時代のアホどもがぁぁ‼LINEうざいからやめてて良かった‼」

「僕とはしてるのに?」

「お前は良いの」


その会話を聞いた、男性先輩二人組は、


「大丈夫か?祐也と穐斗」

「良いんじゃないんですか~?家の兄たち、同居してるのにLINEでやりとり見ててアホやなぁと……見たいです?」

「いや、そっちの方がヤバそうだ。やめておく」

「そうしましょう。見ててわかりますが、祐也君はそっちの道に走るタイプではありませんので」

「そっちって……まぁ、問題だけは起きないように祈る」


日向と醍醐は囁いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ