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閑話休題、あの話が、『日向糺(ひなたただす)』名義で出版されました。

 後日談……


 長い間の歴史を残した、コーンウォール州の名家のスキャンダルの話は、イングランドではなく日本の作家が出版した。


日向糺ひなたただす』年齢未詳、性別未詳の作家の作品は、英語訳も同時出版され、訳者は『糺日向ただすひなた』と、『安部祐也あべゆうや』となっていた。


 作者談が最初に入り、


『この作品は、私たちが巻き込まれ、巻き込まれていった事件を記載したほぼノンフィクションとなっています。登場人物名等は伏せているところもあります。


 そして、この本を購入していただいた収益は、被害者の方々と、未来の子供たちに田舎を残す活動に当てたいと思います。そして、笑顔が少しでも戻りますように……』


と書かれており、最初はとある女性がテディベアの勉強をする為に、日本の田舎から旅立った場面から始まる。


 彼女は好奇心旺盛でドイツ、イングランドと旅をして、バイトをしながら言葉を覚え、人と接していった。


 イングランドである家に住み込みで働くようになり、あと一月で帰国しようと思っていた矢先に、出会った男……。

 嫌悪感を覚え避けていたその男が強引に部屋に押し入られ、子供を身ごもる……生まれたのは双子。

 二人とも連れていこうとした男から、一人だけ何とか奪い返し、その赤ん坊と屋敷に置き去りにされていた3才の子供をつれ日本に帰る。


「恥ずかしい‼」

「家の恥だ‼」


 罵る兄弟。

 しかし両親は、


「よく帰った」


と迎えいれ、両親と二人の子供と生活が始まった。


 下の子供は極端に病がちで、しかしおっとりとしていて、男の子だがお人形や母親のテディベアが大好きでだっこしてよく眠っていた。

 逆に、上の子は自由気まま。

 口を挟むとかんしゃくを起こす為に、戸惑いつつ育てていると突然、息子が倒れた。

 原因不明と診察され、悩みつつあちこちの病院に診て貰う。




 その頃、ウェインの母、モルガーナも不思議に思っていた。

 祖父ユーザーの養女として嫁いだものの、あれだけ問題を起こす父の子供は……自分の姉妹は、何故自分以外に二人だけなのか?

 それに、義母になる二歳下の日本の女性の元にいる弟はおっとりしていて、同じ年の息子と気が合うのに、どうして妹はあんなにも落ち着きがなく癇癪持ちなのか。


「向こうのご家族に……申し訳ないわ……」


 呟く。


「それに、あの父も……何を考えているのかしら……」


 生まれたばかりの次男を抱きあやしながら漏らしたのだった。




 それから、月日はたち、幼かったアンジュと言う名前の幼児は18になり、日本の大学に通い始めた。

 田舎育ちで、友人らしい友人もいなかった為に、親友になった同級生の青年とドライブにいったり、サークルの先輩たちと自分の実家に行って遊んだり……特に都会暮らしの先輩たちが珍しく楽しみつつ田舎の生活に馴染んでいく。

 そして気がつく……この地域が限界集落であると言うことに……。


 高齢者は一日に二本しかないバスに乗るか、週に一回地域の若者……と言っても青年たちの親世代……に町まで乗せていって貰って買い物をする。

 独り暮らしに坂が多い地域、そして遺されていく人々……。


 生きる為に田畑を耕すが猪にやられ、退治するにも、猟をする人が高齢化していき数が減り、逆に猪は増える。

 どうすればいいのか……青年たちは考えていた。


 そして、ある切っ掛けで一気に話が進んでいく。

 アンジュの姉のMEGメグは、中学を卒業後、周囲の反対を押しきり、都会に出ていきモデル兼タレントとして活動しており、芸能界も関係ないアンジュを巻き込んだのである。

 その為に、アンジュの親友、サークルの先輩たちが取材陣に追われ、退学になり、次々に動いていったのだ。


 イングランドでは遊びに飽きたと、今度はテレビの中にいた成長したアンジュを捕まえて何やらたくらむ父親……。

 姉のモルガーナと夫のガラハッド、その息子のガウェインはその様子に心を痛めていた。




 丁寧で的確な文章、そして、感情を表現する才能に世界では驚いた。

 そして、イングランドと日本でロケをする合作映画が作られることになり、主人公の青年は日本の若手俳優。

 ガウェインとヴィヴィアンは、本人役で出てきた。


 ガウェインは普通にラフな格好、ヴィヴィアンはパンツルックに、お気に入りのテディベアを抱いて登場した。


「ヴィヴィ?君の趣味は本当にテディベア捜しなのかい?」


 取材陣の一言に、


「えぇ‼私は、世界中のテディベアイベントにいるわよ‼だって、テディベアは私とフユを繋いでくれたんだもの‼」

「フユと言うと……」

「フユ・清水‼私の尊敬するテディベア作家さんよ‼この子もフユのなの」

「あぁぁ、だから黙ってたのに」


横で大袈裟な身ぶりで愚痴るウェインに、ニッコリと、


「ウェイン?忠犬‼お座り‼」

「しないよ‼祐也役の彼に言いなよ‼」

「それもそうね」

「しないよ~。そんな役しか来なくなるからやめて~‼」


周囲に笑いが沸き起こる。


「それに、ウェイン。報告しなくていいの?」

「あ、そうだった。僕は、交際していた祐也の妹の……」

「俺、弟いるけど、妹いないよ~」

「もうやめてくれない~‼必死なんだよ~‼だから、本当の祐也の妹の、くれないと結婚します‼」



 周囲はシーンとなり、そして、


「おめでとう~‼」

「と言うか、振られたのかと思ってたわ」

「ヴィヴィが言うな~‼デートの邪魔してた癖に‼」

「あら、失礼ね。紅は私の親友よ?それに、糺?」


夫の日向と手を繋いで現れた糺は、


「始めまして。日向糺こと、一条糺いちじょうただすです。夫の、日向です。私が原作……訳は、夫と、祐也クーン‼」

「はいはい‼イイコイイコ。だから転ぶって言ったでしょうが」

「うえぇぇん……」


少女を抱いて現れる青年。


清水祐也しみずゆうやです。結婚前の姓が安部になります。ウェインの兄です。少々間が抜けていてとろくさい弟ですが、よろしくお願いいたします」

「そこで、言わない‼しかも、アンジュも笑わない‼」

「だって、お父さんが忠犬二頭揃ったねぇ‼……って……」

「「忠犬なし‼」」


 二人の声が揃い、大爆笑となり、和気あいあいと会見は進んでいったのだった。




 これはうつつか幻か……皆さん。


 世界を見て下さい。

 皆さんの世界は、本当に美しいですか?

 その美しさは自然のみならず、人の手で産み出す美しさもあるのです。

 田園風景や、ちょっとした町並みも……それを壊すのは、落書きをしたりするのは人であり、人が原因だったりします。

 カラスや猪が住宅街に来ることも、元は、人の生ごみの処理がいけなかったことや、雑木林を杉や檜の山に変えてしまい、生態系が狂ってしまったことも原因です。

 全てを戻すことはもう不可能ですが、少しずつ考えて下さい。

 失われてはいけないのは、心の中にある田舎ふるさとではないでしょうか……。

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