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一見、自分と同じ日本人に見える。虫も殺せない、という言葉がすぐに想い浮かんだ。医者を思わせる丈の長い白衣を着た、見るからに気弱そうな三十半ばの男。
「君に見てもらいたいものがある」
ずれた眼鏡を直しながら、細面の男は笑みを作った。
この男が何者であるにせよ、危害を加えられる恐れはなさそうだ。少なくとも、両脇に立つ二人について来い、と言われるよりは遥かにマシだった。それにこの男には言葉が通じる。どんな形にせよ、交渉の余地があるということだ。
俊哉は再度、黒人の手を見た。
そこに血の雫はもう見えない。自分は完全に冷静な判断力を取り戻している。
恐慌一歩手前で堪えた自我を確認し、俊哉は白衣に向かって頷いた。
こいつらが何者なのか、自分をどうするつもりなのか、知る必要がある。




