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「君が、ウチカワトシヤくん、だね」
一瞬、何が起こったかわからなかった。
聞こえてきた言葉の意味はわかった。自分の知っている言葉、つまり日本語だった。
だが、自分以外に日本人のいないいま、この場所で、なぜそんなものが聞こえたのか?
人殺しが目の前に迫り、恐れ、慄いた頭がおかしくなり、聞こえるはずのない声が聞こえたのか。俊哉は一瞬、本気でそう思った。
「説明しなければならないことがたくさんある。けど、まず、とりあえず、何も言わずについてきてもらえないだろうか」
聞き間違いではない。
再度聞こえた声は穏やかで、パニック寸前の俊哉の頭に、柔らかく波紋を広げた。
それで冷静さをいくらか取り戻した俊哉は、その声がどこから来るのか、視線を巡らした。
その時、若い黒人と白人の間から、小柄な男が現れた。




