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俊哉の頭に、リビングの床に広がる血が見えた。
白人の顔が見えた。生気を失い、鮮度の悪い魚のそれになっていく、青い瞳が見えた。
今度はなんだ。
何が目的だ。
叫ぼうとしたが、声にはならなかった。
自分があそこで殺されていないことも疑問だったし、殺さなかったその相手が自分を見知らぬ部屋に閉じ込めていることも、いままたこうして目の前に現れたことも疑問だった。
しかし、すべての疑問を吐き出そうにも、その言葉が出ない。恐怖に委縮した喉は音を発せず、気がつくと俊哉は一歩後退っていた。
退いた足がすぐベッドにぶつかる。それ以上は下がれない。
逃げ場はない。
どこにも、ない。




