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がん、という金属質な音がしたのはその時だ。
額に当てた手を下ろし、音のした方に視線をやる。
殺風景な壁の一画に、壁と一体化した扉があった。覗き窓もない扉は、扉というよりは蓋を思わせる。よく見ないと扉とは絶対に気づかない。
金属の音は、その扉が開錠された音だった。すでに薄く開かれているのだろう。これまでは聞こえなかった声が聞こえてくる。
扉の向こうで、誰かが話していた。
俊哉は自分の身なりを確認した。誰が入って来るにしても、見られて困る恰好というものはある。
本能的な理性で確認した自分の服装は、幸いにも記憶が途切れた時と同じ、制服姿だった。上がけのシーツを剥いで、下半身も確認する。ちゃんと穿いている。ズボンだけではなく、しっかりと学校用のローファーまで履いていた。
脱いだはずの靴を履き、しかも履いたままベッドに横になっている違和感は、かなりのものだった。履かされた記憶はないし、履いたままベッドに横になる習慣もない。
ひどい違和感だったが、いまは開かれようとしている扉、その向こうにいるのが何者なのかを確認することが優先された。
俊哉はベッドから降り、扉に正対した。
扉までは五歩の距離がある。




