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拳銃だ。
俊哉は一目でそれと判断した。
無論、実物など見たことがない。映画やドラマで見た知識でしかない。
それでも、疑いようがなかった。あれは本物の拳銃だ。
しかし、本物の拳銃となぜわかるのか。
断定した瞬間に浮んだ自問が、自然と視線を倒れた男に戻した。
未だに俊哉を凝視し続ける男の、もみ上げに穿たれた黒い点を見る。
あれは撃たれた傷としか思えなかった。
撃ち殺されたのだ。
あの黒人に。
窓の外から。
小さな庭から。
白く立ち昇るのは、発砲後の熱か、それとも火薬の煙か。
ぞっとした。
全身の血の気が引く音が聞こえたように思えた。
ナイフを振り上げられた時を優に超える恐怖が、頭から爪先までを貫いた。




