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自分もその後を追わされるのだろう。
行き過ぎた恐怖が頭を弛緩させ、覚悟とは違う思考停止が俊哉の身体を占拠し始める。
死を受け入れる体勢ができた、とでもいうべき感覚だった。
その瞬間、視界が暗くなった。
男の影が差し、俊哉の上に覆いかぶさったのだ。
もう逃げられない。見上げた視界の先で、外人がナイフを振り上げていた。
その時だった。ピーコートのポケットで、ケータイが震えているのに、俊哉は気づいた。
その場違いな感覚を確かに感じた。
誰だ、こんな時に。
誘いならいまさらだぞ。もっと早く誘っとけよ。そうすればおれは死なずに――




