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くそ、なんでだ。
どうしてだ。
恐怖に支配された俊哉の頭の中では、その言葉が繰り返されていた。
意味がわからない。
今朝もごく普通に起きて、母親といつものやりとりをした。
いつも通りのメンバーで、いつも通りに程よくサボり、いつも通り由利と言葉を交わした。
いつも通りの充足感がそこにあり、いつも通りの空虚感と過ごす時間もあった。
そしていつも通りに帰宅したのだ。
ならば、いつも通りの夕方、いつも通りの夜が待っていて当然ではないのか。
いつも通りにパソコンに向かい、いつも通りにヴァーチャルの空を飛ぶ。
その予定だったではないか。
なら、この状況はなんだ。
そこまで考え、再び母の姿が浮んだ。
母もこの男に殺されたのだろうか。
たぶんそうだ。
視界には入っていないが、おそらくこの家のどこかで、血の海に沈んでいる。




