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あまりにも有り得ない光景過ぎて、何一つ言葉が出てこなかった。
誰だお前は、という誰何の言葉すら、思い浮かばなかった。
確かに、リビングに人はいた。
だがそれは母ではなく、そして日本人ですらなかった。
俊哉がどうにかうめき声ともつかない声を絞り出すと、その人物がこちらに向き直った。
黒いスーツに黒のネクタイを締めた、おそらくは三十過ぎの男。
顔は日本人にしては彫りが深すぎるし、肌も白すぎる。
瞳はサングラスで隠れていたが、もしかしたら青いのではないか。
白人、と理解するよりも、もっとストレートに、外人、という言葉が俊哉の頭に浮んだ。




