71/332
66
自転車に乗り、学校を後にする。
半分が現実から遊離した頭に、校舎の中からさまざまな楽器の音が響いてきた。吹奏楽部が練習を始めたようだった。
ふと、由利の顔が浮んだ。
直人に訊いてもらってもよかったか。
何かを言いかけた由利の瞳を思い出し、そんなことを考えたが、結局は明日でもいいか、という答えに行き着く。由利の担当するホルンの音色が聞こえ、また明日な、と胸中でつぶやいた俊哉は、完全に学校に背を向けた。
家までは、普通に行けば二十分程度の道のりだった。どんなにゆっくり帰ったとしても、三十分はかからない。まだ陽はあるので、それほどの冷え込みではなかったが、それでも自転車に乗って風を切るには寒かった。
俊哉は朝と同じく、マフラーを鼻上まで上げて、自転車をこいだ。




