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「由利ー、またダンナといちゃついてんのー?」
「誰がよ、誰が!」
そうこうしていると、また別の声が聞こえてくる。
いつものように由利の友人たちが現れ、二人きりで話している姿を冷やかす言葉をかけてくる。
由利は由利で、いつものように否定する声を上げ、結局その友人たちも、なんとなく俊哉の机の周りに集まって話し始めるので、俊哉もその会話の輪に加わることになる。
まったく、呆れるほどにいつも通りの光景だ。
俊哉はこういった在り来りの時間が好きだった。
幸せの中にいると、その幸せの意味がわからない、という理屈もわかるが、こういった日常について、俊哉はそれをあるがまま、そのまま愛せる感性があった。
しかしその感性は、普段感じているあの空虚さの裏返しであることも、俊哉は自覚していた。
こうして他愛もない会話をしている瞬間だけは、目に見えない漠然とした不安や緊張、空虚さを忘れることができる。




