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「それはさすがにまずいかもな」
自分の机に着き、カバンを下ろす。マフラーをはずしてそのカバンの上に置いた俊哉は、ピーコートのボタンに手をかけた。
「かもな、じゃないでしょう。お母さん、心配してるでしょ?」
前下がりのボブカットを揺らしながら、由利は俊哉の顔を覗き込むようにして言う。黒目がちの一重は一見鋭く見えるが、常に笑顔の形に湾曲しているので、それはそれで愛せる。
「知らされてないからな、まだ。知らされたら心配するんじゃないか?」
「おい、俊哉! 昨日はサンキューな!」
「今夜もよろしくな、〝ソーサラー〟!」
適当にお茶を濁そうとしていると、廊下からそんな声が聞こえた。
見ると康平たちとは別の『W.A.R.』プレイヤーの同級生が、廊下を行き過ぎて行くところだった。




