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ハッタリだ。
攻撃などできはしない。
俊哉は左手のスロットルレバーを押し込んだ。
振り切れる。
願いを込めて断じ、今度は上昇に転じるため操縦桿を引こうとした。
その時だった。
その時になって初めて、俊哉はHUDの警告音がいつまで経っても鳴り止まないことに気づいたのだった。
なぜだ、と考える間もなく、次の変化がディスプレイの中で起こった。
コクピットを再現した画面が、影に覆われた。
それが自機の上をいく《F―16》の姿であると理解したのは、レーダー画面上に、背後まで迫ったミサイルの表示を見たのと同時だった。
しまった、と思った時には遅かった。
〝ライオンハート〟は降下中に俊哉の機体をロックオンし、ミサイルをすでに発射していたのだ。
しかもそれだけではない。ミサイルがロケットモーターに点火し、推進力を得るまでのわずかな間に、自身は重力を味方につけ加速。翼下のランチャーを離れたミサイルを追い越し、俊哉の機体の上方を占拠したのだった。
初めから、おれの後方に居座るつもりなどなかったのか。
回避行動に転じるにしても、上昇をかければ《F―16》に激突してしまう。
尻に迫ったミサイルも、眼前を覆いつくす地面も、もう瞬きをする間に自機に接触する。その時点で終わりだ。
俊哉がすべてを理解したのと、〝ライオンハート〟のミサイルが着弾したのは、同時だった。




