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夢中になれるものをはっきりと持っている両親。
どんなことでもいい、夢中になれるものを持ちなさい、と教える両親。
そしてそうした教えを受けながらも、夢中になれるものを娯楽以外に持てないでいる自分。
おそらくそれは教育方針、というより、二人の人生訓なのだろう。だからこそ、そうとわかるからこそ、思春期を迎えた俊哉が感じたのは、両親のような情熱を抱けないでいる自分という存在だった。
それは、なまじどちらの親にも尊敬を抱いている俊哉にとって、大きな負い目だった。
それからだ。父が、母が、ああして熱を上げているシーンに出くわすと、居心地の悪さを感じ、席を離れるようになったのは。
それは自分が何にも情熱を注ぐことができていないと感じている今もまだ、続いていた。




