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携帯電話が大きく、利用料金も高価であった時代を、俊哉は知らない。
その頃はポケットベル、などというものが重宝されたようだが、今の生活しか知らない身には、数字を打ち込んで文字に変換するような不便なものがどうしてもてはやされたのか、理解できない。
『公園集合で』
シノ、と差出人が表示された携帯電話を見下ろし、俊哉はそれをピーコートのポケットに放り込んだ。
午前七時二十分。
日付が変わるまで、と言いながら、結局午前二時過ぎまで『飛んで』いた身体は、未だ睡眠を求めていた。
目覚め切らない頭が、学校へ行く理由を求める哲学的思考を呼び出す前に、俊哉は制服を纏うことにどうにか成功した。
で、このメールだった。これで一、二限は欠席確定だな、と予想を立てつつ、部屋を出る。
階下に降りて、居間に寄る。
すでに朝食の並んだテーブルの横に、それらを準備している母の姿があった。




