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母は、と言えば、どうやらテレビに視線を向けたままで話していたらしい。息が詰まって涙目になっているこちらの様子を見ることもなく、続けた。
「この事件、無差別だとしても、範囲も対象も広すぎる。北から南まで、比較的若い子が狙われているようだけど、三十近い人も殺されてる。誰が同じ目にあっても不思議じゃない」
「それだったら母さんもだろ? 気をつけなさいね」
口真似をして、改めて牛乳を飲んだ。
コップに半分ほど残して、カレーの最後の一口を口に運び、それを流し込むように再び牛乳のコップに手を伸ばす。
そういえば、サラダには手をつけていない。
「わたしはもういい年よ。あんたみたいな大きな子がいるんだから」




