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『W.A.R.』は新型機パイロット育成と選定を目的にしたフライトシュミレータ。その真実を知っている俊哉に、康平の言葉は予想外であり過ぎた。『X計画』の潰えた今、『W.A.R.』もまた、この世界から潰えていて然るべきはずだった。
『W.A.R.』なんだけどよ、入院中はやっぱり全然遊べてないんだろ? 最近、ちょっと様子が変わったんだぜ。
その言葉はつまり、今もまだ『W.A.R.』が存在していることを意味していた。
俊哉は友人たちを連れて、自室へ向かった。皆からすれば、突然豹変したように見えただろう。だがそんなことを気にしてはいられなかった。
八畳の洋間でも五人はさすがに狭い。入口の扉を開放しっぱなしにして、通路にも立っていてもらうことにして、俊哉はその部屋に据えられたパソコンの前に座った。
三カ月ぶりに電源を入れ、パソコンを立ち上げる。立ち上がったら、すぐさまデスクトップに表示されているショートカットを使い、『W.A.R.』のログイン画面へ繋ぐ。
画面は、ごく当たり前のように表示された。この世から消えているどころではない。今もちゃんと機能している。
これはいったい、どういうことなのか。インしてみればわかるのだろうか。俊哉はユーザー名とパスワードを素早く打ち込み、ログイン手続きを終了する。
ゲーム画面が開かれる。どこをとっても、事件以前と変わらない。
まさかとは思ったが、俊哉は思わず考えてしまった。『X計画』が継続されているのではないか、と。何者かの手によって引き継がれ、第二、第三の新型機、そのパイロットが選ばれようとしているのではないか、と。
よからぬ思いが先行し、手がキーボードから離れかける。その時だった。
「ほら、ここだよ。最近こんなのが出るようになった。こんなの、前はなかったろ?」
康平が横から顔を突き出し、手も伸ばして画面を示した。
そこには英文が表示されていた。ゲームの雰囲気を壊さないよう配慮したのか、実際のプレイ画面でも使われているチャットと同じフォントで、下から上へゆっくりと流れていく。
確かに、こんな画面は三カ月前にはなかった。それ以外に大きな変更点は今のところ見当たらなかったが、ならばこれが差し挟まれた理由は何だ? 俊哉は流れていく英文に集中した。少しでも読み取れる単語を探し、文全体のおおよその意味を探ろうとした。
「ここいじれば、日本語になるぜ」
そうして悪戦苦闘している姿がわかったのだろう。康平は伸ばした手で画面右下を改めて指した。そこには使用言語を選択するアイコンがあり、マウスをドラッグすると、確かに日本語を選択することができた。クリックするとわずかな間をおいて、掲載されていた文章がすべて日本語に切り替わった。




