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ここを出た時は、意識を失っていた。
三カ月ぶりに我が家の前に立った俊哉は、あの日のことを思った。
壮絶な体験をした。おそらく自分以外には今後、誰も味わうことのない体験だろう。
そしてあの事件の最後も、俊哉は意識を失った。自分がどうやって《X―2》から降り、米軍横須賀基地の病院へ運ばれたのか、俊哉はまったく覚えていなかった。
横須賀基地で、保護されていた両親と再会した。《X―2》の『B・M・I』を長時間使用した後遺症と肉体的損傷、疲労のため、そのまま三カ月間の入院を余儀なくされたが、その間、ずっと両親が付き添ってくれた。今も両脇に立つ二人は、息子が無事退院してきたことを喜んではいたが、どこか不安を拭い切れていない様子だった。今後一家三人、米軍の保護と監視の下に置かれることが、その原因であることは間違いなかった。
しかし、それでもこうして三人が生きて再会できたことを、俊哉は素直に、たまらなく嬉しいと感じていた。事件の前ならそんなことを思いもしなかった。いや、思っていてもそれは潜在的なもので、決して表面に出したりはしなかっただろう。
あの事件が教えてくれたこと。それは世界的な謀略でも、権力者階級の横暴でも、最先端技術の恐ろしさでもなかった。
誰かと繋がっていることの奇跡。その間に生まれる希望。それを見逃さず、目を伏せず、向き合っていくことの大切さだった。
「おい、俊哉!」
ふいに呼びかけられて、俊哉は声の方を向いた。そこには見知った四人が立っていた。
「大丈夫か! 本物だよな?」
「よかった、本当に大丈夫なんだな」
「急に入院なんて、心配させやがって」
康平、真治、直人が次々に口を開いた。これまで堪っていたさまざまな想いを包み隠すことなく曝け出してくれる。
両親以外は、あの事件のことを知らない。世界的に真実は完璧に隠蔽されていた。俊哉のことも、突然重い病気に罹り、それ専門の病院へ入院した、と伝えられているはずだった。




