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「脳波の……過剰流出……?」
「そうです。今のトシヤは、非常に危険な状態です!」
ミサイル巡洋艦『カウペンス』からの降伏勧告を、今まさに受諾しようとしていたヘイゼン艦長に詰め寄ったロバートは、文字通り飛びつき、力任せにその身を振り向かせた。
「彼は敵機が遅く見えたり、聞こえないはずの声が聞こえたりすると言っていました。私の予想が正しければ、それは『B・M・I』が読み取る脳波が過多になり、驚異的な速度で脳とシステムの間を膨大な情報が行き来している現象だと考えられます」
「それは、いったい……」
「規定量のパルスが行きかう間では、システムは発せられるすべての情報を受け取ります。その中には、戦闘行為に対するイメージが含まれるのは当然ですが、実際には無意識の情報、無意識の恐怖や防衛本能も受け取り、機体制御の演算に加えているんです」
『B・M・I』は、人間がある行動をイメージする時に発せられる脳波を読み取り、その運動を現実のものにするシステムだ。その一連の流れの傍らで、《X―2》の『B・M・I』は、パイロットの脳から発せられる機体制御以外の脳波も、同時に受信しているのだった。
それは、例えば健康状態を示すパルスであり、睡眠、食、性に代表される本能的欲求のパルスであり、自身を守るために供えられた本能的恐怖のパルスである。
前者二つは、パイロットのバイタルを確認する技術に転用することができる。開発は途中だったが、程なく可能になるはずだった。ロバートが提唱した《X―2》の最終プランでは、これら制御以外の脳波を利用してパイロットの健康状態や心理状態をグラフ化する計画が盛り込まれ、実際にそのための装置も開発されていた。
そしてもう一つ。人間の、生物の生存に関する基本的本能である恐怖は、機体制御においてパイロットの安全を保つために使われているのだった。つまり、これ以上は危険であるという制限を無意識にかけることで、システムは搭乗者の身体の安全を考慮した機動を描こうと計算を弾き出すのだ。
だが、それが問題だった。




