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正面から《X―2》の脇を抜け、背後に回り込もうとしていた二機が、突然空中で静止した。いや、正確には、静止したように見えた。
後方では機銃を撃ってきた機体も止まっていた。編隊を組むもう一機も同様で、もう一つの編隊は目視で確認できなかったが、レーダー上で、やはり身動きを止めていた。
これは、さっきよりもすごい。俊哉は息を呑んだ。《X―1》を撃墜した時と同じ現象だったが、敵の速度が先ほどよりも格段に遅い。完全に静止していると言っていい。
ロバート、感謝する。
一度目と同じように、なぜ、どうして、という疑問を、俊哉は持たなかった。ただロバートに感謝した。自分を再び《X―2》に乗せてくれたこと。自分に〝ライオンハート〟を止め、由利や仲間たちを救う機会を与えてくれたこと。そしてこの力を与えてくれたこと。
突発的に始まった、現実離れした時間。まだ一日は過ぎていないわずかな時間の中で、命を救われ、その命を使われた。巻き込まれたと訴えても文句は言われない状況の結果である今、しかしロバートに対する蟠りは一切なかった。ただ感謝の念だけがあった。
俊哉は機動をイメージする。微かにだが動き始めている世界の中で、《X―2》は先手を打って動き始め、光の帯の上を滑っていく。
降下位置が、目の前に見えた。




