34
直進、その後急降下。機動としては難しくはない。ただそれを簡単にさせてもらえる状況ではなかった。全周囲を取り囲む六機の〝ライオンハート〟は、何時如何なる時も、必殺のタイミングを狙っている。『声』を辿ることを急ぎ過ぎれば、回避行動が疎かになる。そしてその瞬間を〝ライオンハート〟は見逃さない。
考え過ぎではない。それはあまりにも明白な事実。相手はあの〝ライオンハート〟なのだ。必殺の一瞬、刹那の間を、見逃す男ではない。
そんなことを考えた一瞬の間でも、直近に踏み込んできた一機から、オレンジ色の光が瞬く。機銃攻撃だ、と理解するより前、反射の領域で俊哉がイメージした脳波を受け取り、《X―2》が機体をローリングさせて、それをどうにか回避する。
機銃弾が空気を切り裂き、機体を掠める奇妙に甲高い音を聞きながら、俊哉は正面を見据えた。光の帯は《X―2》の移動に完全にリンクしている。今の回避行動で前進した分だけ、急降下に転じるポイントが先へ伸びていた。
おれを超えてみろ。〝ライオンハート〟の囁いた『声』が頭蓋に留まっていた。世界最強のプレイヤーを六人、同時に相手にすること。その上で、目標へと至ること。生易しいミッションではない。『声』が言う通り、越えてみせねば、それも、大きく上回ってみせなければ、達成できない。
間に合わない。
想いは、届かない。
「……諦めない……!」
もう、十分諦めてきた。
無駄だ、無意味だと、自らが作り上げた安易に過ごせる空虚の中を、そういう種類の甘えの中を、一人で歩いてきた。
だがようやく気づいた。これ以上は引けない一線が、自分にもあることを。例えば今、友に誰かを傷つけさせたくない、友に傷ついて欲しくない、という一線。そういう一線の前では、諦めてはいけない。無理だ、無意味だと何もせず、自分の中へと逃げ込んではいけない。
それでどうなるという根拠はない。脳が機体を制御しているのだから、気分が高揚するぐらいでは何の変化もないのかもしれない。だが俊哉は叫んだ。盛大に雄叫びを上げた。コクピット内に反響する声は、自分でも信じられないほど大きかった。
その瞬間、再びあの現象が起こった。




