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ここで終わらせると決めた手が、サイドスティックを巧みに操作した。
うねる大蛇を髣髴とさせる渓谷の地形は、たった一度のミスでも命取りになる。
岩壁が目前に迫っては後方へ行き過ぎていく。
右へ左へ、レーダーに浮かび上がる渓谷の曲線を、〝ソーサラー〟は忠実になぞることに全神経を集中した。
瞬間、HUDが血の色に明滅した。
警告音が耳を騒がせる。
渓谷内にも、SAM発射台が設置してあったのだ。
HUD上に敵の存在が標示される。
それを確認したかしないかで、〝ソーサラー〟の手は魔法のような素早さで武装管制をミサイルから機銃へ切り替えた。
機銃用照準レティクルの円形がHUD上に現れ、〝ソーサラー〟は機体を振って敵SAM発射装置のアイコンを、レティクルの中心に持っていく。
短く発砲。
毎分六千発もの弾丸を吐き出す機関砲、M61A1バルカンから放たれた銃弾が、谷の壁面から顔を出した敵に向かって直進する。
数十発が壁面を薙ぎ、残りの数十発が目標を射抜いた。
爆発さえも起こらず沈黙した目標を振り返る余裕は、高速飛行中の身にはなく、HUDの明滅が止まったことを撃墜確認にして、〝ソーサラー〟はさらにスロットルレバーを押し込んだ。
目標施設まで、あと数秒。




