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『ウィルコ』
了解の意を打ち込むと、〝ソーサラー〟は操縦桿を倒した。
一気に降下を始めた機体が、みるみる地表へ近づいていく。眼下に見えていた山々が、今度は圧しかかるように迫った。
するりと機体を狭い溪谷の中へ滑り込ませた〝ソーサラー〟は、左手のスロットルレバーを押し込んだ。
機体の速度が上昇し始める。
こんなところで加速するなど自殺行為に思えたが、やってのける自信が〝ソーサラー〟にはあった。
まだ基地護衛の航空戦力は生きている。
この狭い谷に入り込んでくる敵機もいるはずだ。
その時、後方を取られれば、一度上昇してやり過ごし、再度施設への攻撃を行わなければならなくなる。
今、この機会を逃すことの方が危険。
〝ソーサラー〟はそう判断した。




