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男はロバートと名乗った。
ロバート・ウィーヴァー。
アメリカ合衆国の、ある研究機関の博士だという。
「君を呼んだのはぼくだ。強引な方法を取って申し訳なかった」
得体の知れない変質者とはいえ、ナイフを振り上げる男を問答無用で銃殺したやり口は、確かに強引だ、と俊哉は思った。だが、ひとまずその強引さのおかげで今生きている身には、何も言えなかった。
次の言葉を探す二、三秒の沈黙が流れた。
何から話せばいい。
何を言おうとしている。
俊哉はロバートに探る眼を向けた。
そしてどうやら相手にも、自分と同じような迷いがあると気づいた。
それが確信に変わる直前、ロバートの背後にあの黒人が歩み寄った。早口な英語で何かを伝える。
「……準備ができたようだ。もう一つ見てもらいたいものがある。ついてきてもらえるかな?」
共感、というものは、相対した存在を、ぐっと身近にするものなのだと、俊哉は初めて知った。
言葉を選ぶ様子を見せるロバートに対して、自分と同じ迷いがあることを確信した俊哉は、恐怖心を抱かなくなっていた。
深く頷き、歩き始めたロバートの背に、俊哉は再び従った。




