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ここは海の上だ。
完全に確信に至った俊哉は、それを問う言葉をぶつける相手を探して振り返った。
「ようこそ」
それとほぼ同じタイミングだった。
目を向けた先で白衣の男が、ずれた眼鏡の鼻の部分を右手の中指で直しながら、口を開いた。
「アメリカ海軍ニミッツ級原子力航空母艦五番艦、《エイブラハム・リンカーン》へ」
短く切り揃えた茶色い髪に、縁のない眼鏡をかけた、線の細い小柄な男。
改めて白衣の中の姿を正視した俊哉はしかし、先ほどのように虫も殺せぬ、という印象が浮かぶことも、耳に入る日本語に安堵することもなかった。
原子力航空母艦。つまり、空母。
現代の軍事において、中核を担う存在。百機以上の航空戦力を有し、最前線基地として機能する、プラットホーム。
やはり想像は間違っていなかった。俊哉は何度となく『W.A.R.』の中で見た空母の形状、外観を、バルコニーから見える景色に照らし合わせた。
なぜ自分が、その空母にいるのか。
疑問が追ってきたのは、その後だった。




