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まだ救い手とも、人殺しの仲間とも知れない男の話す日本語が、これほど自分の心を平静に保つ要因になっていたのかと思うと、自分がいかにいい加減な人間か気づかされたような気分になる。
自らの生き死ににかかわる恐怖に対しても、いい加減な安堵と恐慌を繰り返す自分。こんな事態に至っても、真正面から物事に対せない、真剣になれない、自分は、そんな人間でしかないのかもしれない。俊哉は何の脈絡もなくそんなことを思った。
箱が減速した。若干の浮遊感に怖気と嫌気の背中を押された気がしたが、それを口に出すわけにもいかない。
開かれた扉をさっさとくぐり抜けて行く白衣に従って、俊哉も箱を降りた。




