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その背に黒の羽根を  作者: 林 りょう
第八章:捻くれX意義=紡がれる全て
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下された処遇




 記憶の混濁により、自身が何者か分からないらしいサイードは、周囲に男として接してくれるように頼み、城での生活が始まった。

 しかし、医者には、まず体重を増やしてからゆっくりと身体の回復に努めるように言われていたのだが、食事を好まないのは変わらないらしい。出される量の三分の一にも満たない程度にしか取らず、食事時には常に、部屋で誰かしらの叱責が飛ぶ。


「サイードさん! 料理人が気持ちを込めてせっかく作ってくれたものを残すなんて、どういった了見ですか」


「いや、でも、これ以上は吐きそうで……」


「だからこそ、消化しやすい病人食をお出ししているんです!」


 それは、サイードの世話をアナスタシヤから仰せつかっている侍女の場合がほとんどである。寝台の横で仁王立ちする彼女に、サイードは毎日困った様子で何とか言い訳ばかりを並べるのだ。

 けれど、一番やっかいなのは、それにもう一人加わり、二人を相手にしなければならない時。


「陛下、サイードさんは今日もまだ、たったの五口しかお食べになられてません」


「だからそんなにもやせ細ったままなのよ。なんなら、(わたくし)が直々に食べさせてあげましょうか?」


 なにを隠そう、もう一人とはアナスタシヤのことである。

 自分が分からなくとも、王がどういったものかは分かるらしく、サイードはアナスタシヤに対しては、救ってくれた感謝の念と共に逆らえない。


「いえ、食べます。食べますから、お二人でそう苛めないで下さい」


 その攻防戦は、常にサイードの惨敗であった。

 このようにアナスタシヤは、忙しい執務の合間を縫って、何度もその様子を見に来ていたのだが、当然周囲は素性の知らない相手と王の接触に難色を示していた。元々サイードには、昏睡時から常に監視の者が張り付いている。

 その監視に見られながら、サイードは日々をリハビリに費やしていた。

 寝具の上にて、腕立てから腹筋、握力に始まり、やせ細った身体のどこにエネルギーがあるのかと驚かせながら、目覚めから二週間後には城内を自由に歩ける様にまで回復していく。そうすると、今度は庭を走るサイードの姿が見られるようになった。

 それは、驚異的な早さでの回復と過酷にしか思えず、またもや怒られることにはなったが、医者は心底驚いていた。

 ただ、それが可能ということは、サイードが一般人では無いと周囲に示すことにもなり、不信感は尚更強まる。体力は勿論の事、精神力が常人では無いと、アナスタシヤと世話係の侍女以外の人々を倦厭させた。


 それでもサイードは、その姿勢を貫き、リハビリ以外の不審な動きを一切見せずに城で生活していく。そして、一ヶ月後には、剣の腕以外は以前の身体を取り戻すまでとなった。

 こうなると、監視の目はより厳しくなる。けれど、剣を使っていたことを忘れてしまっているのか、サイードは一度も武器を握ろうとはしない。そんなある日、彼はアナスタシヤに呼ばれて執務室に赴くことになっていた。


「陛下。サイードです」


「入りなさい」


 扉の両脇に控える騎士に頭を下げ、控えめに中へ声を掛けると、既に聞き慣れている声が耳へと響く。

 自分で扉を開けて入室すれば、そこにはアナスタシヤ以外にも数人の人間が居て、皆がサイードへ視線を向けていた。


「身体の具合はどう?」


「もう大丈夫ですと、何度お教えすれば、俺は陛下に安心して頂けるのでしょうか」


 アナスタシヤは、最早挨拶と化した言葉で歓迎するのだが、他の者達の目にはあまり良い感情が篭っていない。それが分かりつつも、サイードは彼女に苦笑しながら、出来る限りゆっくりとした動作でその御前に立った。


「お取り込み中でしたら、後ほどまたお伺いしますが?」


「いえ、大丈夫よ。ごめんなさいね、少し意見の食い違いがあって、ピリピリしているでしょう?」


 部屋は、誰でも分かる程、空気が張り詰めていた。

 サイードとしては、他意も無く言ったのだが、それにアナスタシヤが苦笑を返し、他が視線を逸らしたことで、その内容が自分についてだったのだと察してしまう。彼は、自分の立場をしっかりと分かっていた。

 そして取った行動が、相手がどういった地位なのかも分からない状態で、アナスタシヤも含めて全員に頭を下げるというものであった。


「まずは、命を救って下さったことに深くお礼申し上げます。そして、本来であれば直ぐにでも立ち去るべきところ、ご好意に甘えてしまって真に申し訳ございません」


 とても綺麗な礼であった。呆気に取られ、言葉を忘れる周囲を他所に、顔を上げたサイードはアナスタシヤへと向き直り、もう一度頭を下げて言う。


「陛下。俺はもう、普通に動けるまで回復しましたし、今からでも城を出ようかと思います。ただでさえお忙しい陛下の憂いに、俺はなりたくありません」


「ちょっと、サイード? どうしてそうなるの?」


「陛下が俺を怪しんでくれていないことは、本当に嬉しいです。しかし、他の方々のご心配も当然ですし、俺も陛下には健やかでいて欲しい」


 はたして、その行動に裏はあるのか。アナスタシヤ以外、その場にいる者はそれを考えあぐねた。

 騙しているのであれば、相当な狡猾さで、純粋な思考からであれば、誠実とも聡いとも言えるけれど、自ら立ち去ってくれるのであれば願ったり叶ったりだと、事の成り行きを見守る。

 ただ、周囲がアナスタシアを案じていたように、彼女もまたサイードのことを心配していた。


「けれど、自分が何者かも分からない状態で、その身一つで一体どうしていくつもり?」


「それは、陛下のご心配には及びません。人は、どうにでも生きていけます。そして、いつになるかは分かりませんが、必ず、この恩に報いたいとは思ってます」


 サイードの言葉を、アナスタシヤは考えなしだと感じた。同時に、責任を取るとはっきり告げた自分の手を取ったというのに、その気持ちを分かっていないことが腹立たしくも思う。

 突然の行動に置いていかれた思考は、そんな感情でサイードの冷静さと一気に並ぶ。

 アナスタシヤは言った。


「自分の命が狙われてるとは思わないの?」


 サイードの怪我は、単純に盗賊に荷物を奪われてとも、女として襲われたとも言えないものだ。明らかに、魔法が関係している。

 実際は違うのだが、アナスタシヤ達には、明確な殺意によって行われたものに見えていた。


「俺も、自分がどういった状態だったのかは、聞いています。しかし、もしそうだとしても、それはきっと、自業自得というもの」


「自業……自得?」


 答えたサイードに、アナスタシヤが首を傾げれば、彼は頷く。


「以前の俺が、命を狙われるようなことをしていた、ということです。どう考えても、俺は理不尽な暗殺を企てられるような、高貴な地位にはいなさそうですし」


 人が命を狙う動機というのは、実に様々あるが、狙われる側が完璧に理不尽と叫べるものは意外に少ない。それこそ、地位や財産、身体目的の他は、少なからずどちらもが原因を持っているだろう。

 二人には、言葉の説得力に差がありすぎる。けれど、強制力を有しているのは、アナスタシヤだ。彼女は、サイードが天から使わされた者だと願ったままで、ここで手放すには惜しいと考えていた。


「私とて、馬鹿ではないわ。あなたが、裏の者だと考えていないわけでは無いし、皆の不安も分かってはいる」


 サイードが執務室に訪れるまで、この件について補佐達と衝突もしていて、監視を命じたのも自分だと、アナスタシヤは彼に告げた。

 それに驚く素振りを見せなかったことから、気付いていたか予想していたのだろう。

 それでも、アナスタシヤはサイードが出て行くことを認めなかった。


「あなたが、自業自得だと言うのなら、それは私だってそうよ。責任を持つと、言ったはずだわ」


「陛下と俺では、その重みが違ってきます」


 輝きの異なる金はお互いに一歩も引かず、真正面で向かい合う。無表情なサイードと違い、アナスタシヤの眉間には皺が寄っていた。


「だったら、私を守りなさい」


「……は?」


 しかし、唐突な命令がサイードに表情を生み、部屋の空気を変える。

 思わず零れた声は、一つでは無い。サイードの近く、執務机の隣に立っていた者と、アナスタシヤの後ろに立っていた近衛までが、口を僅かに開けて驚いていた。

 そんな周囲を無視して、アナスタシヤは王だからこそ性質が悪い我侭を言う。


「恩に報いたいというのなら、私の傍で私を守るの。それ以外のものは受け取らないし、認めないわ」


「いや、でもそれは……」


「しかも、今。今じゃないと認めないの!」


 サイードの右手が室内の光を黒く反射させながら、無意識にアナスタシヤへ伸びるが、その指先で彼女はそう叫びながら頬を膨らませそっぽを向く。

 周りは、こうなったらどうにもならないと知っているのか、それぞれでひっそりと頭を抱えている。 そして、一番面倒な役回りをさせられているサイードは、暫く右手を宙に彷徨わせ、瞬きを繰り返した後、腰の横に腕を戻しながら深い溜息を吐いた。


「守るといっても、俺にはその技術がありませんよ」


「それは大丈夫。バルバロトが、あなたの手は剣を握っていた者の手だ、って言っているもの」


 不機嫌さはそのまま、しれっと言ってのけるアナスタシヤが、今度はその場に居る全員の溜息を誘う。

 バルバロトとは、国王の最も近い場所で護衛を行う親衛隊の現隊長であり、星の国で最も最高位に位置している騎士である。

 サイードの視線が、その名を聞いた瞬間、アナスタシヤの背後に立つ騎士二人の内の一人に向けられた。


「それは、本当でしょうか」

 

 半ば困惑し、指摘された掌を見詰めながらの問いに、純血種で体格のしっかりした強面の騎士は躊躇なく頷く。そして、この場での発言の許可を得てから、低い声を響かせた。


「どういった技術を持っているかは知らないが、お前の手に武器が握られていたのは確かだろう。掌だけでなく、腕の筋肉のつき方も、戦いで鍛えられたものだったからな」


 この時サイードは、どうして体つきまで知っているのかと考えたが、この騎士――バルバロトこそが、アナスタシヤの指示で馬車まで彼を運んだ者であった。

 それだけではなく、城に移動させた際には、念入りに全身を調べてもいる。当然、女騎士も同席でだ。


「そう……ですか」


 サイードは、何とも言えない表情で、小さく「だったら尚更、出て行くべきですね」と呟いている。

 星の精石もまた、この城のどこかにあるのだから、本当に役目を忘れてしまっているのかもしれない。覚えていれば、自分から離れようとするとは考えられないからだ。

 しかし、今までを考えれば、これが策であるとも考えられる。同情を誘い、思慮深いと思わせ、不思議な青年だと人を惹き付けて喰らい付く(・・・・・)


「嫌よ。出て行くのは、私が許さないわ」


 それでも引かないアナスタシヤに、サイードがここで初めて視線に力を込めた。

 握られた両拳の中にあるのは、一体どういった感情か。アナスタシヤの中のサイードには不釣合いな冷めた声が部屋に響く。


「もし、それで俺が陛下を殺しても、それが責任だからと受け入れるのですか? 陛下だけでなく、城の全員がですよ?」


「サイードはそんな事――」


「陛下も俺も、怪我をする以前を知らないのだから、しないなんて言い切れない」


 自分とは違う金に見つめられながら、それぐらい分かっているのだと、アナスタシヤは心の中で呟いた。その反面、遊びたい盛りからずっと王として生きているのだから、少しぐらい好き勝手したいと葛藤もする。

 と、ここで、バルバロトとはまた別の者が、徐に口を開いた。


「陛下が、口負かされるのを久し振りに見ますね」


 執務机の隣に立つ、真面目な雰囲気を持った男は、宰相に当たる地位で名をハーラルトといい、アナスタシヤを王就任からずっと補佐してきた者である。

 苦笑を浮かべながら優しい目でアナスタシヤを見て、次にはサイードに厳しいものを向けていたから、幼い頃の世話役でもあったのかもしれない。


「負かされていないわ。サイードが、恩を仇で返しているだけよ」


「しかし、彼の言っていることが、至極真っ当な正論です」


「だから、そんなことは分かっているのよ!」


 さらに不機嫌さを増すアナスタシヤだったが、サイードと彼女以外の部屋に居る者達は、この後の流れをもう分かっている様で、肩の力を抜いていた。

 そして、バルバロトと一旦頷き合ったハーラルトは、しっかりとサイードに身体ごと向く。彼は、信用していないと訴えつつ、仕方なさそうな態度で言った。


「君は、中々に空気を読み、頭の回転も良さそうだ。ここでひとつ、審査をさせてもらおう」


「……審査?」


 訝しむ様子を無視し、決定権が本人には無いと言外にほのめかせば、それをしっかりと受け取ったサイードが、途端に苛立ったように険しい表情となる。

 けれど、それがさらに、自分の評価を上げてしまうことに気付いていない。

 アナスタシヤは違うが、元々ハーラルトは、サイードが城の敷地から出れば密やかに処理(・・)する腹積もりであった。既に、星の国の内情を少なからず知ってしまっているからだ。

 ほぼ封鎖されているからこそ、純血種の潜在的な魔力の低さも少子化も知られずに済んでいるこの国に於いて、時折やってくる間者であれば城に侵入でもされない限りは利用価値がある。しかし、サイードは現在進めている政策も知ってしまっている為、捨て置くには危なすぎた。

 ただ、ハーラルトはアナスタシヤとのやり取りを観察し、始めはそれに気付かずにサイードが出て行くと言っていると思っていたのだが、危険で死ぬかもしれないとの言葉への返しによって、僅かにではあるが惜しいと考えた。


「今、我々が進めている政策は知っていますね?」


「外の血を入れようとしていることですか?」


 サイードの言葉に頷き、現在教育下にある元奴隷たちを候補生と称したハーラルトは、アナスタシヤが黙って成り行きを見守る中、審査を行う。

 面白そうにバルバロトが観察する先では、サイードが困惑しつつもしっかりとした視線でそれに対峙していた。


「彼等にある奴隷の刻印。それをどうするかで今、陛下と我々で意見が分かれています」


 この審査自体、城を立ち去った後には追っ手と口封じが待っているだけだと告げているようなものだ。それでもサイードの表情は、察しているのかいないのかを悟らせない。

 ハーラルトに視線を向けられたアナスタシヤは、それに気付いてしまったのか、彼に怒りの視線を向けるも無言でいるわけにはいかず、一言だけ「私は、消してあげたいと思っているわ」と絞り出した。


「我々、といいますか、私はですが、そのままにしておくべきだと思っています。では、君の判断は?」


「俺の、ですか……?」


「二つの意見の理由を説明する必要があれば、言ってください」


 そして唐突に、ハーラルトはサイードの意見を求める。

 さすがに驚く素振りを見せたサイードだったが、お構いなしに言ってくるハーラルトに、暫く間を置いてから「理由はいらないです」と言って考えを巡らせ始めた。

 黙って見守るアナスタシヤと、細かく観察してくるバルバロトやハーラルトの視線。両極端なものに晒されながら、サイードの命運は分れる。

 とても地味ではあるが、判断がハーラルトのお眼鏡にかなわなければ、アナスタシヤであっても城外では手出しが出来なくなってしまう。その手腕は一切の証拠を残さず、だからこそ彼女は、ハーラルトに絶大な信頼を置いていられた。

 緊張するアナスタシヤの縋るような視線を一心に注がれながら、サイードの唇が開く。


「今は消すべきでは無いと、俺は思います」


 思案したのは、ほんの少しの時間だった。そして、はっきりと言う。

 その答えと言い方に、全員が含まれているものを感じて首を傾げ、「続けなさい」とハーラルトが先を促せば、サイードは根拠を示す。


「今の彼等は、自分達の立場に対して、困惑と驚愕、不信感を持っているはずです。どんなに獰猛な動物であれ、檻の扉が唐突に開けられて放置されれば、出てくるまでに時間がかかりますから」


「だから尚更、もう自由なのだと彼等に教えてあげなければ」


「はい。ですが、今は(・・)消すべきでは無い。消すことで感謝し、この国に尽くしてくれるのなら素晴らしいことですが、それと同時に繋いでおく鎖が無くなる。ですから、自由は別の形で示すべきです」


 アナスタシヤの言葉に同意した上で、サイードは説明を続ける。

 奴隷になってしまった者は、額にその刻印が刻まれてしまう。主人の下から逃亡してしまっても、隠れて生活出来ない様にだ。前髪では隠せない大きさで、布か何かで隠せば逆に怪しまれるのだから、逃亡者達の末路というものは、こぞって悲惨なものである。

 アナスタシヤはそれが不憫で、だからこそ今すぐに消すべきだと訴えていた。


「慈善事業で行っているわけではないのでしょう? せっかく陛下が心力を注いでこじつけたチャンスを、易々と逃がすわけにはいきません」


 けれど、買い付けには当然資金が必要で、それは国のものが使われている。となると、逃げられた際に非難を受けるのはアナスタシヤだ。

 サイードが指摘したのはそこだった。


「立場の違いというものを、現段階ではまだはっきりとしていた方が良いでしょう。ですが、それが一生となるとまた違ってくる」


「それはどうしてですか?」


 心なしか楽しそうな声に変わったハーラルトの質問に、サイードは相変わらず客観的に答えていくのだが、その判断基準が一体どこにあるのかが些か疑問だ。

 その不審を当然、ハーラルトもバルバロトも持っているのだが、かといって誰もがこういった考えを持てるわけでは無く、二人は殺すには惜しい人材だと強く思った。


「彼等とこの国の民の間に出来た子供を、混血児として隔離するつもりは無いのでしょう?」


「勿論です。他の子と同じ権利を持って、両親の手により育ってもらうつもりです」


「ならば、尚更、その親が一生奴隷として周囲に蔑まれでもすれば、それが将来、反旗を翻す種になりかねません」


「では、彼等を星の民と認めるべきだとも、君は言うんですね」


 思わず手を叩きそうになったハーラルトだったが、最後にそう意地の悪い質問をした。

 そうすると、察したサイードが柔和な笑みを浮かべて「俺がされたのは、刻印についての質問です」と返し、答えとする。流石のこれには堪え切れず、ハーラルトの控えめな笑声が部屋に響いた。

 アナスタシヤの「ハーラルトが笑った……」との呆然とした反応を置いて、サイードの行く末は決まった。


「良いでしょう。君には、これからバルバロトの監視下でのみ、武器の所持を認めます。しかし、それ以外で武器になるものを密かに所持したり、不審な動きを見せた場合には、それ相応の処置を行うとし、現在の監視の目も続行させてもらいます」


「え……、いや、俺は城を出て行くと」


「これから、みっちり訓練してやるから、楽しみにしておけ」


「いや、だから」


「こうなると、サイードに何かしら地位を与えるべきね!」


 ハーラルトが手を叩きながら宣言すれば、バルバロトが楽しみだと笑い、アナスタシアが飛び上がらんばかりに嬉々と叫ぶ。

 全員が、サイードの制止を無視して話を進め、結局彼は困り顔で笑った。


 その二日後、サイードは親衛隊候補生として、騎士服を纏い再び剣を握ることになる。

 ただし、今度は守るための白い剣を――






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