第5話 当たっちゃったよレアスキル
「はぁぁあ!?」
場にいた全員が、裏返った声で叫んだ。次の瞬間、役所の空気が爆ぜた。
「アイツがレアスキルだと!?」
「聞き間違いじゃないのか!?」
あちこちから上がる怒号とどよめき。
信じられない、あり得ない、そんな感情が混じった視線が、一斉に俺へ突き刺さる。
ただ、視線だけはやたらと重い。
皮膚の上に針を並べられているみたいで、早くこの場から消えたかった。俺は、ぎこちなく椅子から立ち上がる。
それでも視線は離れない。むしろ、数が増えた気さえした。
その中を割って、ひとり近づいてくる影がある。カリスだった。俺の肩を軽く叩く。
「いや〜良かったじゃないか!レアスキル羨ましいなぁ!」
屈託のない笑顔を俺に向ける。しかし、カリスの背後で、カレンとシャノンがこちらを見ている目は、まるで違っていた。
笑顔の裏に、はっきりとした感情が滲んでいる。明らかな敵意。
そのときだった。
ポンッ、と肩を叩かれる。
振り返ると、そこにはフィーラー先生が立っていた。
「いやぁ……まさか、だな」
先生は大げさに笑い、俺の背中を軽く叩く。
「レアスキル持ちを受け持つことになるとは、先生も鼻が高いよ!」
周囲の視線が、さらに集まる。
「瞬間移動だぞ? 冒険者として引っ張りだこだ。レアスキル持ちはな、C級冒険者は堅い」
……数時間前まで、
《「このまま行けば、お前はG級冒険者だ。どうせ、魔物に殺されるのがオチだ」》
とか
《「悪いことは言わん。ユニークスキルを調べたら、この学校は辞めろ。別の職業を目指しなさい」》
とか言っていたのと同じ人物だとは思えなかった。
俺は曖昧に笑うしかなかった。
フィーラー先生が、パンパンと手を叩く。
「これでユニークスキルの鑑定は終了だ!後日、冒険者カードが届く。それをもって、君たちは正式な冒険者となる!」
拍手が起こる。祝福の声も、称賛も、確かにそこにあった。
けれど。ヒソヒソと、ひそやかな声も混じっている。
「運だけのくせに」
「どうせ使いこなせない」
俺は、それらを聞かなかったことにして、役所を出ようとした。
役所の外へ出た、その瞬間。
足元に何かが引っかかり、身体が前に投げ出される。
「ッ!」
派手に転び、床に手をついた。
クスクス、と小さな笑い声。
顔を上げると、シャノンが立っていた。
「ああ、ごめん」
そう言って、手を差し出してくる。
表情は穏やかで、声も柔らかい。
だが
「……調子に乗るなよ」
耳元で、低く囁かれた。背筋が冷える。
(……いや、怖)
俺はその手を取らず、すぐに立ち上がると、何も言わずに走り出した。
こうして俺は、望んでもいなかったレアスキルを手に入れた。
これが、俺の人生の転換期だった。
最初に言っておく。この物語は、英雄譚じゃない。




