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異世界駐在所  作者: clavis


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第4章第33話 怪物vs勇者⑴

災害が踏み込んだ。

石畳が沈む。

次の瞬間、ハルクは視界から消えた。


「——っ」


衝撃。

凪は反射的に地面に刀を差し込む。

割れる石畳、だが凪の身体は止まらない。

金属で金属を叩いたような硬質音。

腕に痺れが走る。

遅れて爆風。

掴んでいた刀から手が離れると同時に、風に身体が弾かれ、背後の壁に叩きつけられる。

壁が砕け、肺から空気が抜けた。


(クソがっ——!)


視界の端で瓦礫が浮く。

ハルクの拳が振り抜かれた余波だった。

間合いを詰めるのが異常に速い。

巨体に似合わない踏み込み。

凪は転がり、二撃目を回避する。

地面が抉れ、石畳が宙を舞う。


(出力は前回以上か?)


即座に分析。

威力は前回以上で再生能力は未知数。

だがまずは——硬度。

凪は踏み込む。

剣豪構成。

対人特化の速度。

間合いの内側へ滑り込む。

首元へ一閃。

刃が走る。


——止まる。


皮膚の表面で火花が散った。

浅い。

皮を切ることも叶わず。


(やはり硬いか)


ハルクの腕が振り下ろされる。

凪は最小動作で逸らす。

だが完全には殺せない。

拳が肩を掠める。

鈍い音。

骨が軋む。

拳圧に耐えるも、よろけそうになる。


(直撃なら終わってたな)


距離を取り、間合いを外し、火炎の黒魔法で視界を遮る。

同時に自身に転移をかけ、ハルクの背後に一瞬で距離を詰め、連撃。

肺が焼ける。

転移と黒魔法の負荷が残っていても関係ない。

背後からの強襲にハルクの外皮は削られているようだ。

傷は血を吹き、手ごたえを感じるが


(クソ仕様がっ)


ハルクの傷口が蠢く。

皮膚が盛り上がり、再生しているようだ。

赤い光が瞬く。

斬ったはずの裂け目が、塞がる。


「びっくりだなぁ、前も思ったけど色んなスキルを持っているのか。」

「さぁな。」


凪は舌打ちと同時に、内心を整理する。


(やはり、再生持ちか)


最悪だ。

硬くて、速くて、再生する。


「ただの災害だなテメェは……本当に仮面ライダーかよ。」

「さぁねぇ、俺が求めていたものかどうかはわからないがね。」


ハルクが笑ったように見えた。

次の瞬間、地面を砕きながら突進。

凪は刀を低く構える。


(まだだ)


入れ替えは使わない。

今切り替えれば、空間魔法が消える。

住民が残っていた際の保険がなくなると、奇襲離脱ができなくなる。


(こいつだけならやりようはある。)


真正面から衝突。

刃と拳がぶつかる。

衝撃波が円状に広がる。

背後の建物の窓が一斉に砕け散る。

凪の足が石畳にめり込む。

剣豪の鎧が保護しているからこそ、人間の身体で耐えているが、ハルクの猛攻は止まらない。

押される。

骨が悲鳴を上げる。


(これ以上受けたら危険だ——)


それでも、笑う。


「いいね……」


血が口の端から垂れる。


「本命らしい」


ハルクがもう一段、力を込める。

石畳が砕ける。

凪の膝が沈む。

限界が近い。


(ーーーっ)


一瞬。

死の直前、身体の余計な力が抜けたことで、ハルクの拳が振り抜かれたその勢いを利用し、横へ滑りいなす。

巨体が前のめりになる。

——隙。

凪は背後に回る。

今度は関節。

膝裏へ斬撃。

深く入った。

肉を裂く感触。

血が噴く。

だが。

ハルクは止まらない。

振り向きざまの肘打ち。

凪は腕で受ける。

鈍い音。

腕の骨に亀裂が入る感触。

吹き飛ばされる。

瓦礫の中に転がる。


(……なるほど)


痛みを無視して立ち上がる。

膝裏は裂けた。

だが、もう再生が始まっている。

速度は遅い。

完全再生には時間がかかるのか。


(再生は即時ではない)


条件付きなのか?

血流か、魔力か、それとも部位的なものか。

解析はまだ足りない。

ハルクが再び構える。

凪は刀を持ち直す。

呼吸を整える。


(剣豪では削り切れない、だが今、入れ替えは早い)


まだ敵の全貌が見えていない。

第二波が来れば、黒魔法が要る。

住民が出れば、空間魔法が要る。

ハルクを腕を組みながら、不服そうに凪に語りかける。


「何か前回よりキレが悪いな」

「……様子見は終わりだ」

「出し惜しみなんて、余裕じゃないか」


凪は地面を蹴る。

今度は正面ではない。

速さで翻弄する。

鎧武者が斬る。

斬る。

斬る。

火花が散る。

浅い傷が増えていく。

ハルクの動きが、わずかに鈍る。


(なんだ?急にやつの動きが...やつの能力にも何か制限があるのか?)


その瞬間——

遠くで爆発音。

凪の視線が一瞬だけ揺れる。

ハルクはその隙を逃さない。

拳が迫る。

避け切れない。

直撃。

世界が白く弾け、凪の身体が宙を舞う。

地面に叩きつけられ、石畳が割れる。

肺から血が溢れる。

視界が滲む。


(バケモンがっ……)


それでも、意識は落ちない。


(まだだ)


まだ入れ替えていない。

まだ切り札は切っていない。

凪はゆっくり立ち上がる。

血を吐き、笑う。


「悪くない」


ハルクが構える。

夜風が止まる。

凪は自身のスキルを意識する。

入れ替えるか?

それとも——

戦場が、次の判断を待っていた。

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