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異世界駐在所  作者: clavis


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第4部第20話 東の森のアジト突入作戦⑶

覇流駆が召喚した?化け物達が塵となって消えたあと、

森には、奇妙な静寂だけが残っていた。

焼け焦げた木々。

地面に刻まれた亀裂。

血と雷の残滓。

凪は、ようやく身体を起こした。

剣を支えにして、息を整える。


「……願い、か」


ぽつりと零れたその言葉に、守が視線を向ける。

凪は、地面を見つめたまま続けた。


「さっきのはお前のスキルなのか?守。」


守は答えない。

影が揺れる気配が、まだ足元に残っている。


「なんで黙ってるんだ。答えられないのか?」

「わからないんだ。」


守は苦虫を噛み潰した様に顔を歪める。

凪はそれを見て疑問がよぎる。


「もしかして、制御できてないのか?」


守は歯を噛みしめる。


「……そうだよ。自分の意思では発動しないんだ。」


凪は顔を上げ、守を見る。


「厄介なスキルなんだな。」


守の拳が震えた。


「ふざけるな。俺は、あんなもん……望んでない」

「...そうか、だがそのスキルが無かったら皆死んでたんだ。」


凪の言葉は静かだが、鋭い。

守は何も言えなくなり俯いた。

凪は剣を収め、深く息を吸った。


「まずは、回復だな、調査はその後だ。」


守は黙って顔を上げる。

凪は自身に回復魔法をかけて、体力と外傷をある程度回復させると、アジトの捜索に移るのだった。

そんな中で、先の戦いで隆起した地面をアスレチックをやる様に走り回っていた、モモちゃんが一つの疑問を投げかけてきた。


「マモルー、ウシどこー?」

「あー、そういえば、牛?は何処いったんだろうな。」


どこか間の抜けた声が、森に響いた。

遊んでいたわけじゃなく、きっと牛?を探してたんだ、うちの子は。

うん、きっとそうだ、そうに違いない。

ある程度回復した凪は目を閉じ、スキルを起動する。


「勇者スキル——PT招集」

「なんでもありだな!?勇者は!?」


空間が歪み、光の粒子が集束する。

次の瞬間。


「ブモォォォォッ!!?」


牛?が、突然凪の横に出現した。

地面に転がり、勢い余って二、三回転。


「ブモ……ブモォ……(涙)」


守は呆然。


「……それ、どういうスキルだ」

「パーティメンバーを引き寄せる」

「牛?もしっかりパーティに含まれるのか……てっきり装備品扱いかと...」


牛?は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、守の足にしがみついた。


「ブモォ……」

「うわぁぉ、汚い。けど」


凪は無言で、守にしがみついた牛?を抱き上げる。


「行くぞ」

「ブモッ!?」

「この先の扱いが目に見えてるから許すしかないよな...」


崩落しかけた岩陰。

かろうじて形を保っている、アジトの入口。

中は半壊していたが、罠だけは、執拗に生きていた。

床を踏めば、刃が跳ねる。

壁に触れれば、毒針が飛ぶ。

天井には、落石用の仕掛け。

凪は、何も言わず牛?を前に出す。


「ブモモモモッ!!?」


——ガンッ!


刃が弾かれる。


——バキン!


毒針が砕ける。


——ゴゴゴ……ドン!


落石が牛?に当たって、粉砕。

牛?は震えながら、完全に盾として機能していた。

守は目を逸らす。


「……後で、絶対いい飯食わせてやるからな」


守が投げかけた言葉に牛?は涙目で頷いたように見えた。

アジトの奥。

机の上には帳簿。

契約書。

金貨の箱。

転移者由来と思しき道具。

凪は全て、インベントリに収める。


「……これは」


守が拾い上げたのは、

王都の紋章が刻まれた封蝋。


「よくわからないな、でも封蝋されてるなんて普通じゃないよな」


凪は無言で頷く。

街へ戻り、

警察署内で証拠品が並べられる。

遠藤は、眼鏡を押し上げながら唸った。


「なるほどねぇ……詐欺資金の流れ、兵の移動記録、街道警備の抜け……」


指が止まる。


「……繋がったねぇ、なんで詐欺女が捕まらないか」


こめかみあたりを指で押さえながらため息をつく遠藤。


「これを見てよ、守。」


差し出されたのはこの街の警備に関するメモの様なものだった。

門の交代時間や、警備の配置状況等色々と書き込まれている。


「うわぁ、ビカク落としたの拾われた並に正確じゃないか。」

「そうなんだよねぇ、これはしばらくビカク練り直しかも。後は、なぜこれがバレたかなんだよねぇ。」

「悪いやつでこっちの行確やってくるなんて、日常的じゃない?この前も特殊詐欺グループに金もらって捜査情報流してたやついたじゃないか。」


それはそうなんだけど、と遠藤は腕を組み直す。

基本的に情報戦の穴をつくなら、敵を取り込むのが一番早い。

それを逆に利用する手もあるが、スパイ映画とは違ってこれは現実だ。

慣れないことをして住民を危険に晒す事はできない。

そして、例の封蝋について話が移る。


「この貴族家。表向きは連合支持、裏で犯罪者と接触してる」


守が低く言う。


「戦争が膠着してる今、内側から削るつもりなのか」


遠藤は笑わない。


「噂じゃなく、事実として裏が取れたねぇ」


凪は静かに言った。


「何が絡んでようが、俺がいた街を襲ったケジメをつけさせるだけだ。」


守が見る。


「異世界でもトクリュウかよ。人間の悪意は底なしってことだよな。」


部屋に、重い沈黙が落ちた。


「まあ、そのために僕らケーサツがあるんでしょ?出来る事をコツコツやっていこうよ?こういう平和のためにさ。」


遠藤は笑いながら指を刺した。

指の先では牛?とモモちゃんが呑気に干し芋を食べていた。


「あっ、ウシだめーっ!!」


牛?はモモちゃんの干し芋まで食べようとしたので、頭を齧られている。


「ブモ……」


守は一抹の不安を牛?に向けていた。

直撃したら生物であれば、死ぬであろう技を受けても無傷な牛?とは一体なんなのか。

そして、あれが守に言い放った「もっと願え」とは何なのか。

事案は次のステージへ向かって動き出していた。

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